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刀を選ぶ夢を見た。
今回の夢は目覚めたときは忘れていたのに、仕事中、急に夢の内容を思い出した。
思い出したと言っても、前後の内容は忘れている。たしか割と長い夢だったんだけど。
***
脚立に乗って、天井裏に何振りもある刀を出している私に、小学一年生くらいの男の子が言う。
「ああ、とうとう選ぶんだね」
男の子は嬉しそうにこちらを見上げている。目の大きな、可愛らしい男の子だ。髪の毛は栗毛色で、色が白い。お行儀の良さそうな男の子だ。
天井裏にあった刀は、形は様々だった。
刀身のみのものもあれば、シンプルな白木の鞘のもの、署名入りの木箱に入ったもの、古布にグルグルに巻かれたもの、たくさんの呪符が貼られたものもある。
私は目についた刀を手に取る。
朱塗りで細かな螺鈿が沢山貼られた鞘を手に取る。
刀を引き抜くのと同時に、男の子がひょこっと顔を出す。
「それにする? それは刀身が包丁みたいになってるよ!」
確かに鞘から抜くと、刀は大きな牛刀のようだった。それほど重くは無いが、私のものでは無いと思った。
次の刀を持つと、また男の子が楽しそうに喋りかける。
「それはね、面白い形をしているよ!」
黒塗りの鞘の刀は、抜くと薙刀のような形をしていた。これも、私のものでは無い。
床に並べられた刀たちは、自分が選ばれるのを待っているかのよう。
私は中央に置かれていた、木の枝を手にした。山椒の枝のように、表面がボコボコとしていて堅い木だ。まっすぐと伸びていて、杖のよう。
けれども、私が柄を引くと、中から刀が顔を出した。
反りの全くない、真っ直ぐの刀身だ。赤銅色をしているが、錆びている訳ではなく、その証拠に私の顔が刀身に映る。
手の馴染みを感じるまでもなく、刀は元々私の体の一部のように、重さを消した。
「それにしたんだね!」
男の子はとても嬉しそうに、私に笑顔を向けた。
***
仕事中にクランプを両手に抱えて歩いていたら、急に思い出した。
金属の重さで思い出したのかな?
私の刀は、座頭市の仕込み杖みたいでかっこよかったです。
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