地獄一丁目巡りの旅♪

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地獄一丁目巡りの旅♪

異世界転生モノ(地獄)に着手してしまいました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 閻魔の話によると、一つのミッションクリアすれば元の世界に返してくれるとの話だった。こんな簡単でいいのか? 非常に怪しい……そしてそれをクリアの為の準備に町を巡って見ては? との事。これも怪しいな。だがアリサは疑う事なく素直に従って地獄巡りを開始する。 「お金貰ったんだよね? いくら入ってるのかなあ。しかし、手続きって話だったけど、一切やってないなあ。拍子抜けしちゃった。あちら側でやってくれるみたいで楽だわw」 外へ出ると、閻魔から貰った小銭袋の中身を確認する。流石に閻魔の前で確認する事は出来なかった様だ。 ジャラジャラ 「え? 1、2、3……うわー金貨が50枚入ってる! これってもしかして天正小判じゃない? 古文書で見たもん! 凄ーい閻魔様って太っ腹ねえ! 何か売ってる店とかあるのかしら? 見て回ろっと! ああ、死んで良かったー」 しかしアリサが時々口にする古文書とは一体何なのだ? 様々な分野を網羅しておる。もしや……アカシックレコードなのか? まあいいだろう。そして、死んで良かったと言っているが、皆さんはこの考えは分からないかもしれない。だが彼女の立場で考えて見ればその真意が見えてくる。  そう、一個のミッションをクリアさえすればいつでも現世に戻れるという約束を閻魔と交わした後で、大金を所持し自由に街中を動けること。 それは、こう言い換えられる。今のアリサの気分は、夏休み前の最後の一日を登校し終え、帰宅。その上ママに小遣いを貰ってこれから買い物に行く様な状態だ。 更に魂? の間は恐らく寿命に関係なく行動出来ると言う事も分かっている。ここにいる間は年を取らずに色々な経験が出来ると言う事だ。 肉体は確か冷凍保存をしてくれている筈であるしな。この辺は前回の最後を見ていただければ分る筈だ。まあその事はアリサは知らない訳だが……もし知っていればそれどころではないだろう。だがその事をすっかり抜けていてこの状態なら浮かれても仕方ない。 本来何かを知る為には本を読んだり検索したりする為にその寿命を使わなくてはならない。だのにこの瞬間はノーリスクで新しい知識を吸収しまくれるのだ。所謂、エンペラータイムなのだ。 それはもう神様にでもなった気分になっても仕方がないな。まあ実際神裔Ⅳと言う階級で、戦力もいきなり高ランクに位置しているしな。平原で地獄獣がいる中無傷で歩き回れた事実も知っている。ほぼ無敵状態。その上、地獄と言う初めて訪れる街並みまで自由に回っていいと言う。 未知の物に触れる事は彼女にとってはご馳走。盆と正月が同時に来た様な最高の気分。もうウキウキが止まらない。 まあ仮に一生ここで暮らすとなればこんな気分にはならないだろうが、ミッションを一つクリアするだけで帰れると言う約束がこの有頂天状態のアリサを誕生させた訳だ。だが彼女の事だ。ミッションをクリアしても暫く滞在し、この世界の情報を絞り尽くしてから現世に戻るのだろうな。ちょっぴり嫉妬である。 「どこを周ろうかしら? ウキウキ♡」 浮かれておるな。セリフにウキウキ♡等と言う祇園……おっと噛んでしまった。失礼! 擬音まで発している……だが本来ここでそんな気持ちでいられる生物などいないのだ。地獄の一丁目と呼ばれるこの場所は、閻魔が住む首都の様な所。しかし、現代の日本よりも発展しておらず、藁の屋根の一軒家や長屋で2階建ても存在しない。町の人は、主に腹が出っ張ってふんどし一丁で歩き回っている亡者や、青白い魂。の2種類で、その2種族が普通に日常会話をしたり、両手で石板の様な物を読んだり、それを見て涙ぐんでいる者などもいる。 他には……小さい子供の亡者? は、何やら札を床に撒き散らし、手に持った札を読み終えるや否や取り合う様な遊びをしている。これは読み札を読んだらそれに対応する取り札を取るようなルールっぽいな? 恐らくカルタ遊びか? 地獄にも娯楽はある様だ。だがその空気は重い。いつこの場所から出られるのか? そんな不安そうな雰囲気で一人明るいアリサは異端児。 「しかしみんな元気ないわねー」 辺りを見回すと何名かの亡者がいるが…… 「ううー」 ゴトッ 「ああーこの頃に、戻りたい……」 ゴトッ 何やら手を合わせ唸るとその間から何かの塊が出ている。長方形のブロック? が落ちているが何だろう? それにその声はとても寂しそうである。一体何をしているのだろうか?  「え? 何か手の間から石を出してる? 流石地獄。村人も変なのばかりねー。後で何してるのか聞いて見よっと、階級も見たところ私より遥かに下みたいだし、何でも話を絞り出せるのは分かってるからね! まずはお店お店! どんな物が売っているのかが知りたい!! あっ雑貨屋があるね。ここに入ろうっと」 ダダダダ しかし時間が無限にあると分かっていてもなるべく効率的に動いているな。この辺は相変わらずである。そして、亡者達の謎の行動よりも店が気になる様で、謎の行為を解明しようともせず店内に。 「こんにちはー」 「いらっしゃいま……う? 神……裔Ⅳだと? 何故こんな高位の方が……?」 店主の鬼もアリサの頭を見て驚愕する。 「ちょっと品物を見せて?」 しかしそんな事は一切気にせず店内を見回る。 「ど、どうぞ」(もう何もいらない筈だろ……全て揃ってるじゃないか……冷やかしか?) メニューを渡される。 「どれどれ? へえ、結構な品揃えね」 ーーーーーーーーーーお品書きーーーーーーーーーー 下級亡者の長巻 400ヘル 50戦力上昇 中級亡者の刀 800ヘル 160戦力上昇 上級亡者の同田貫(どうたぬき) 2000000ヘル 1000戦力上昇 下級亡者の着物 300ヘル 40戦力上昇 中級亡者の着物 1500ヘル 120戦力上昇 上級亡者の着物 1500000ヘル 900戦力上昇 下級亡者の雪駄 100ヘル 20戦力上昇 中級亡者の雪駄 500ヘル 60戦力上昇 上級亡者の雪駄 500000ヘル 500戦力上昇 青銅の烏帽子 200ヘル 30戦力上昇 白銀の烏帽子 1000ヘル 70戦力上昇 黄金の烏帽子 1000000ヘル 750戦力上昇 地獄の擽りマシーン 200ヘル 網 300ヘル 鬼太郎印の妖艶黍団子 500ヘル なんデーモンなおし 600ヘル 新狩婁汰(しんかるた)400ヘル 地獄の害怒仏苦(がいどぶっく) 100000ヘル 血の池赤色筆 3000ヘル 血の池青色筆 3000ヘル 血の池黒色筆 2000ヘル ヘールのコトダマ 10000ヘル オニテツマトイのコトダマ 20000ヘル オニリキのコトダマ 20000ヘル ズノウメイセキのコトダマ 20000ヘル アタリテラスのコトダマ 20000ヘル 地獄酒赤閻魔 3000000ヘル 「これは……武器や私の着ている着物や帽子もあるわ。あら? 私もう最上位の物を付けてるみたい……刀は無いけどね。ん? コトダマって何?」 「ご存じでしょう?」 「え? 教えて?」 「は、はあ……変だなあ? こ、これは覚えるとスキルが使える様になるものです。ただしMPを消費するので、亡者にならないと使えません」 「このカルタ? 何これ?」 「これは亡者たちの暇つぶしの為に作られた遊具です。かあどげえむと言う物ですよ。読み札と取り札があり、読み札を読みそれに対応する鳥札を一番に取った者が獲得出来、全ての読み札が読み終えた時に一番多くの取り札を持っていた者が勝利といったルールです」 「ルールは何となく分かるけど……へえ。ちょっと中見ていい?」 「どうぞ」 箱に入って居る様で、蓋を開けると一枚の絵札が。 43c76468-d3d0-4e05-bfb4-3bc135b18c86 逞しい鬼がとても鋭い針が付けられた金棒を持っている。 「あっ賢者?」 だがアリサは一番に頭に輝く階級に目が行く。 「これは【あ」の絵札ですね。この方は阿傍羅刹(あぼうらせつ)様ですね。50年前に阿傍羅刹をして居た鬼を降し、新・阿傍羅刹になった方です。因みに読み札は 【阿傍羅刹、地獄で最強の鬼也!】  ですね」 「最強かあ……納得。でも50年も前で新とは言えなくない?」 「この世界の50年なんて……」 「ああ、そういえばそうね……で、ヘールってのは?」 「ええと体力を回復します。一番簡単な物ですが、使い続けるとこの上位の 【べヘール】 を覚え、それを使用し続けると更に上位の 【ベヘマ】 を覚える仕組みですね。で、オニテツマトイは防御上昇で、オニギンマトイ、オニカネマトイとなり、最終的には全員の防御を2倍にします。オニリキは」 「攻撃上昇かしら?」 「はい。オニワンリキー、オニカイリキーと続きます」 「オニゴーリキーはないんだ」 「無いです。 モケポンのオニゴオリと勘違いする人が多数出てしまい、止むなく削除となりました。ですが流石神裔様ですね」 「簡単よwで、ノートの様な物はないの?」 「ええ、強いて言うなら100000ヘルのこちらの本の隅になら書けますけれど」 「あらあらそんな事までして買わせたいの? 症困田熊恣意わねえ……あら嚙んじゃったww商魂逞しいわねえだったわw」 お? アリサが? 少量ではあるが稼いでくれた? まあ本当に少量だがなあ。だが、この積み重ねが良い小説に近づく第一歩。頑張ろう! 「へ? 何で同じ事二回言ったんですか?」 「いやよく読めばこの違いなんて簡単に分かるでしょww」 「よ、読むとは……どういう事ですか? 私は貴女様の会話を聞いて疑問に思ったのですが……詳しく知りたいのです……」 「知らない。でもさあ余白に書くなんてさあ性に合わないのよねえ……出来ればまっさらなノートも売ってほしいなあ……これは筆よね? 書く物はあるのにノートはないんだね」 「はい申し訳ございません……」 ペコリペコリ 必要以上に大きく頭を下げる店主。 「携帯が無くなったんで代わりにメモの様な物があれば助かるんだけど……ん? そこまで謝らなくてもいいのよ……」 「そうですか? ですが……」 「いいのよ! ん? これ何?」 一つの商品に目が向く。   「それは……貴女様なら知っているのでは? ……まあいいでしょう」 アリサの頭上を見ながら言う店主。 「え?」 「これは相手の脇腹を(くすぐ)る機械【地獄の擽りマシーン】ですよ」 「へえ、面白そうねこれは? お酒?」 「これは一度使うとなくなりますが、戦力が永遠に上昇するお酒、地獄酒赤閻魔です。あの閻魔様の顔まで赤くしてしまう程の強いお酒です。何と100000も上昇します」 「それはすごいね」 「お一人様一回のみの購入が限界となっています」 「まあ戦力とか別にいいか。他に気になるのは無いかなあ……じゃあこのマシーンは幾ら?」 「200ヘルですよ」 「ええとこれでいい?」 金貨を二枚渡す。 「ええええええ? それは200000ヘルですよ! お釣りを用意するのが大変ですよ」 「これしかないんだけどなあ」 「そうですか? そういう事なら仕方ありませんね。では、とりあえず金貨一枚で大丈夫です……お釣りは99800ヘルですね」 ドッサリ 大量の銀貨と銅貨を渡される。銀貨99枚と銅貨8枚だ。銀貨が1000で銅貨が100と言った感じだろうな。お釣りの方が重そうである。そして金貨一枚は100000ヘルと言う事か。10000ヘルはないのだろうか? まあ良い。という事は? アリサは恐らく100000ヘルの金貨を50枚持っていると言う事だ。そうなると合計5000000ヘルを持っている計算になるな。そういえばピキーンの時、5000000ヘル初獲得と表示されていたな。これだけあればお品書きの中でも最高級な装備を一式揃えられる位はあるな。何故閻魔はこんな大金をよこしたのだ? この金額ともなると夏休みが始まった直後に宝くじが当たった様な物ではないか……うらやまー。そう言えばもういらない物だしと言う気になる言葉を……まあ良い。 「わあ重い! じゃあね」 「また来て下さい」 売店を出て、他にも面白そうな所はないかと探そうとするアリサ。すると、すぐ傍に一人の背の高い亡者が背を向けている。アリサは思う。 (さっきの店員は鬼だったよね? あれは亡者よね? 亡者って話し出来るのかな? それともゾンビみたいに何も考えてないのかな? どんな事を考えているのか興味ある! ちょっとお話してみよっと) その男にも当然階級が付いている。彼の頭上には 【達人Ⅳ】 と言う階級。アリサの2倍近い身長で、腹は出ているがかなり恵まれた体格だ。 「ねえ」 ピキーン120『日、亡者と会話』  ピキーン1200『限、亡者と初会話』 「えええ? ハァハァ……なんだ子供じゃないか……死ぬほど驚いた……ってもう死んでいたな……うっかりしてた……」 「そんな驚いたの?」 「それは驚くよ」 「そんな事は無いと思うけど……大きい割には臆病なのね。あんたっていじめに遭いやすいタイプじゃない?」 「そうかなあ?」  「怒った?」  「そんな事では怒らないよ。可愛いいたずらみたいなもんだしね。生前かなり酷い仕打ちを受けたけど、それでも俺、一度も怒った事ないしなあ」 「そうなの? やっぱいじめられてたんじゃない? そんな事されたら私は怒り狂ってまず相手の親に言いつけて、学級会で言いふらし、教育委員会にも駆け込むし、消費者センターや子供電話相談室にも電話するし、兎に角ありとあらゆる手段を用いて出来る事を全てを 【一日の内】 で終わらせるけどなあ」 アリサをいじめるのはよした方がよさそうだな。 「行動力すげえ……」 「普通だよ。でもあんたお腹凄い出てるよね? 家畜でもないのにそんなに太ってどうするの?」 「突然なんだよ……ふう……まあそうなっちまうんだ。ここの人間は、正確には亡者だけど、お腹が異様に出る様になるんだよ。わざと醜い姿にされるんだ。性格悪いよなあ……生前はムキムキだったんだぜ? ここでは普通だと思うけど……ここでは筋トレも出来ないしなあ。いくら筋トレしても筋肉が付かない不思議な世界だ……階級が全て」 「見回りの鬼さんもそんな事言ってたなあ。ピキーンのみで強くなれるんだもんね……」 「そうだよ。しかし君、腹が出てないなあ。俺と大して変わらない階級だけど何が違うんだあ?」 「え? 達人Ⅳってすごいの?」(階級で言われてもどれくらい強いか分からないよ) 「当たり前だよ。26万もあるんだからなあ」 「え? 私の10分の1ぐらいじゃん。まだまだねw」 「え? うわ! よく見たら違ううううひえええ」 達人の色は青紫。神裔Ⅳも青色なのだ。神裔Ⅳの文字のサイドに翼が生えているが、色がほぼ同じ。どうやらこの男はアリサを自分と同じ階級だと勘違いしていたらしい。 「ああ、色は同じだもんねw間違えちゃったんだ。でもね? 神裔Ⅳの両サイドに羽が付いているのよ? それをしっかり見極めなさいw」 「ま、誠にも、申し訳ございません」 「ちょっと何よ!」 「何がでしょう? 失礼がありましたか?」 「違うって! ため口でいいよ。私は鏑木アリサ。小学五年生だった者よ。今はミッションの途中ね」 「本当ですか? アリサちゃん? よろしく! じ、じゃあ……で、でもなんでそんなウキウキしているんだ? ここは地獄だぜ?」 「これからミッション前に準備を兼ねてのお買い物の途中なんだ……雑貨は終わったから次は漫画とか」 「ああ、お買い物ならウキウキするな……あ、漫画なんか無いぜ?」 「えー、そうなんだ」 「そういえば生前リーダーに買い物の時に怒られたなあ」 「へ? リーダーに何を【言われた】の?」 『机の、上が かたづいてないって言われた だけども なにも せずに明日を迎えた』 ぬ? またあの歌か…… 「え? 何それ?」 「え? 何の事だい?」 「今言ったよね? 机の上が片付いてないって」 「知らないぜ?」 「えー? おっかしいなあ」 「多分空耳だよ」 「そうなの? もう3回目よ? まあいいや。本以外でいい物売っているお店知らない?」 「知ってるけどついてくるかい?」 「は……」 (まてよ? ずっとついてこられるかも……嫌だなあ) 「いえ? 場所を教えて欲しいの」 「お? そうなのか?」 「うん、修ちゃんにお土産買ってあげる予定なの。雑貨屋にはあまり相応しい物がなかったの」 成程、地獄を出る前にここの土産を松谷修造にあげるつもりの様だ。 「修ちゃんって松谷修造か?」 「そうそうテレビ出演するんで、お土産を渡すのよ」 「ん? テレビに出られるの? ああ、 【上界戻り】 か」 「上界戻り?」 「そうだ。ここから人間の住む世界に戻る事だな」 「そんな感じかなあ。まあ条件付きでだけどね」 「へえ、羨ましい。(条件? 階級以外でそんなものあったっけか? まあいいや)俺もファンだったなあ。もっと早く会っていればこんな所に……」 「え?」 「何でもないよ」 「ここに来た理由でしょ? 知りたい!!!」 彼女は好奇心旺盛。 「いいのか? こんなおっさんの昔話だぜ? あまりいい思い出でもないしなあ。嫌な奴の話を沢山聞く事になるぜ?」 「いいよ! 聞く!!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 序盤から最強。そして大金も獲得したアリサ。こんな状態では敵などいないでしょう。ところが……この亡者との出会いで彼女は絶望する事になります。そして、自分の力の無さをまざまざと見せつけられます……どんなに階級が高くても、使い切れない程にお金があっても、どうしようもない事が……ここから物語は大きな〇〇を見せます。
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