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命の危険との同居という部分に目をつぶれば、ここでの暮らしは至極快適だ。
男はまず、この塔を訪れるカラスと友人になった。賢いカラスは朝昼晩の折を見て、男のところへパンや木の実を運んでくれる。
雨の多いこの街では、水に困ることはない。ほら、こうしている間に、ポツリ、と男のシワまみれの固い額でしずくが弾けた。
男が天へ向かって口を広げるとすぐ、乾いた土にじょうろで水が注がれるように、本降りの雨が男の喉の奥にまで注ぎ込まれた。
人間、ものを食べればモノを出す。幸いここではだぁれも見ていない。
…町の住人たちは、この石塔の下を歩くとき、たとえ晴れの日であっても傘をさすのを忘れない。
なんでも、この塔の上にはいたずらな精霊が住んでいて、通行人めがけて汚物を撒き散らすんだとか。
困った住人がついに聖職者を呼んで、悪魔祓いを始める始末だった。
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