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 あるときは恋に燃える青年に、別のときには諸国を巡る吟遊詩人に。さらには世界の王にすら変身を遂げた。    妄想の中では、男の周りにいつも大勢の美女がはべり、遠い異国のはるか昔の女王でさえも男の虜になった。  てっぺんが丸く禿げ上がった頭の中の世界で、男は自由自在に姿を変えて無数の人生を歩んだ。  やがて男にとっての現実と妄想との関係は逆転して、ついには完全に妄想の世界の住人と成り果てた。
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