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うららかな春の日であった。
「今日はエイプリルフールであったのう」
国王は誰にともなく つぶやいた。
まもなく新年度国家企画会議がはじまる。国王は城の塔から国を見渡していた。そこへ大臣がやってきて、
「国王様!遠方の国が攻めて参りました!」
「うーん?」
「すぐに兵を出して迎え撃ちましょう!」
「うーん?えーと、 ちょっと 、やめとけ」
「けれど、すでに我が国の果樹園が荒らされております!」
「農民にケガ人もでております!」
「では、敵国の王女を捕らえて捕虜として・・・」
大臣達は口々に言った。
「あー、ケガ人は手厚く手当してやりなさい。がー、しかしー、いやー」
「では、いかがなさるおつもりか!」
国王はお城の塔から領土を見渡した。
近隣の国と共に育ててきた果樹園や農地が青々と広がっていた。
「あのねー
亡き父王が、よく言っていたんだよ-」
「何と?」
「戦には 勝ってはならぬ 抑えてはならぬ
手をたずさえることこそ弥栄の道なり(シランケド)」
(完)
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