1話

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 飼い殺し、とはまさに自分の事だろう。  それはとても寂しく思うけど、恨む気持ちは少しもない。  (つがい)である伴侶の服をベッドにもっさり積み上げる。  他にももっと……と本能が匂いを探す。  椅子のクッションとか、ソファーのカバーとか外してベッドに置く。  自分の服を脱ぎ全裸になればベッドの、心地よくも頭の奥がぐらぐらするような安心と不安を掻き立てる匂いの中に身を入れ、鳥の巣のように自分の周りを囲っていく。  巣の中には葡萄や桃などの、とにかく水分を補給できる果実も籠に入れて置いておく。  これから一週間、自分の、自分だけの大事な大事な巣だ。  本来は番も一緒に過ごすはずの巣を使うのは一人。  不毛だし、虚しい。  それでも私物を自由に使わせてくれる伴侶の寛大さに感謝しなければならない。一週間後にはぐちゃぐちゃでとても使えるものではなくなってしまうのに、好きにしていいと言ってくれている。  金色の髪と涼し気な青い瞳の番の姿を思い出せば、彼の匂いも強く感じる気がした。 「あ……んぁ…っ」  ちらちらとくすぶっていた熱が一気に身体に燃え広がる感覚。  今朝まで彼が身に着けていたガウンを(くわ)え、顔を押しつける。それだけで自分が(たかぶ)っていくのがわかる。  いつも通りに陰茎を(しご)き、用意してあった張形を意地汚く涎を垂らすように濡れた後孔に差し込む。気付けばうつぶせになり、ベッドに陰茎を押し付けこすりながら、手は尻を掴み夢中で張形を激しく出し入れしていた。 「はぁ…あっ…もっと…んん…っユーグ…さまぁ…ひぅっ」  もっともっともっと激しく奥を突いてほしい。  満たしてほしい。  傍に居てほしい。  次第にそれだけを思うようになり、虚しさも何も、なくなる。 「もっと……あつぃ…ぁん、ゆーぐしゃま…しゅき…すき…っ!」  次第に大好きな番の、伴侶の名前を呼び腰を張形に押し付ける。  夢中になり熱に浮かされたように発情のままに身を委ねれば、妄想の中で大好きな伴侶が優しく自分の名を呼ぶのが聞こえてくる。  愛しい番の匂いが濃くなって、抱きしめられ、腹に熱を穿たれている感覚に次第に身体が満たされていく。  番の心地よい匂いの中で乱れ狂う間の記憶はない。でもそれでいいのだ。  こんな独りよがりを覚えていたら羞恥と後悔で、それこそ自分に協力してくれている伴侶に顔向けができない。  乱れ狂うのも、記憶を失うのも、Ωとしての本能なのだ。  今はただ、大好きな人に抱かれる甘美な夢を貪る。  ……――そうして再び空虚さを思い出すのは、この発情期の一週間が終わった後になる。
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