父の昔話・許婚が前日に自殺した件

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父の昔話・許婚が前日に自殺した件

これは大人になってから今は亡き父から聞いた話だ。 父は田舎の農家の7男1女の次男として生まれた。昔だから子供の数は多いよね。 山中で家業より木材を切り出したりする農耕馬を大切にして育ったらしい。 若い頃の父のモノクロ写真を見るには中々イケメンに写っていた。 長男が家業の農家を継がず、公務員の奥さんと、家を離れてしまって、後継は自分だと思っていたらしい。 ただ父はかなりの偏屈者で、愛馬に掛ける装具品などに好き勝手にお金を掛けていたりと、祖父には良く思われていなかったらしい。 また私が覚えている範囲でも孫としても祖父も祖母も厳しい人で村では有名だったのだろう。 父に同じ村の女性と婚姻の話が上がり、いよいよ明日式という晩に、彼女が急死して小さな村は騒然と。 小さな村だけに隠せないもので、農薬を飲み自殺したと言う話は当の父の耳にも入った。 父曰く「俺が嫌で自殺したんだ。死ぬほど嫌だったんだ」 年を取ると昔の話を何度もするようになるが、この話は2、3度だけしか聞かなかった気がする。
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