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散歩
恭子は毎年この時期になると近くの公園で咲いてる桜を見ながら家族で花見をしていた頃を思い出していた。
「あ〜また今年も一人で自分用のお弁当と水筒を持って散歩がてらに花見を楽しんでいる。娘達や夫がいた頃はなんて楽しかった事だろう。まだ幼かった三人娘にはとても手がかかった。
花見の為にお弁当を朝早くから作ったっけ?
そのお弁当作りの間、姉妹喧嘩が始まってそれを止めるのにも一苦労。
なかなかお弁当作りが終わらなかったっけ?あの頃夫は子供達の喧嘩を止めようともせず、ただテレビを見ているだけだった。
子供の面倒もみようとしない夫にイライラする毎日だった。「手伝って」と言えば「俺の手を煩わすな!それなら花見行かない」そう言って自分の部屋に閉じこもった。私や子供の話など一度も聞いてくれたことはなかった。
そんな無神経だった夫は早くに亡くなってしまった。娘達を育ててる時は大変だったが、今は三人とも結婚している。
娘に会いたい。でもきっと幸せに暮らしているから何も連絡して来ないんだろう。親なら娘三人の幸せを願わないとね」
私はそんな独り言をいつの間にか桜の木に呟いていた。
写真を今年もこの携帯で撮って娘達に携帯で送信しよう。そうだこの木だったわ。この桜の木の下にシートを敷いてお弁当とお団子食べたんだっけ?懐かしいなー。元気にいつまでも育ってね桜の木さん」
私は家族で行った近所の桜の花見を楽しんでいた。そして私達家族のお気に入りだったこの桜の木の下にシートを敷いた。娘達が幼かったあの頃とは違い小さな一人用のシートを敷いた。
そして昔と同じようにお弁当を広げた。
娘達が好きだった唐揚げにウインナーと厚焼き卵
ブロッコリーとにんじんのサラダ三種類のおにぎりとお団子。
「ちょっと作りすぎちゃったわ。あの頃とは違って今は一人なのにね」
私は夫の写真を見ながら。
「あら、一人じゃなかったわ。あなたもいたわね」
そう言って一人で「くす」っと笑った。
その時「お母さんやっぱりね。今年も一人でここに来るだろうと思ってね.一緒にここで花見をしない?って実家に帰ってお母さんに言おうとしたらいなかったから来ちゃったわ。今日いい天気だって言ってたから。今日ここに来ると思ってね。私達もお弁当持って来たのよ。一緒に花見しようお母さん」
「ひろこ〜何で?遠いのに」
「隆史さんがねこう言うことは花見がてら直接お母さんに言ったほうがいいって言うから来たの。隆史さんと二人で」
「隆史さんも遠いのにありがとうね。シート持って来たならここまだ空いてるわシート敷いてしまいましょう。今年はひろこと隆史さんと一緒に花見ができるなんて嬉しいわ。お腹空いたでしょう?お母さん作りすぎちゃったわ二人ともよかったらつまんでね」
ひろこは言った「そうなんだけどねー。ちょっと食欲なくてね〜」
恭子は「えっ?食欲がないの?大丈夫?無理して来なくてもよかったのに〜。それより体調悪いなら病院行ったほうがいいわよ」
ひろこは言った「お母さん私、病院に行ったよ」
恭子は「それで何だって?ひろこは仕事忙しいんだから胃とか悪いんじゃないの?」
ひろこは言った「私ね隆史さんとその事を言いに来たのよ。私ねお母さんになるの」
恭子は「本当〜よかったね。お母さんもいよいよおばあちゃんになるのね。隆史さんおめでとう。これからも娘を宜しくお願いします」
「はい、わかりました」
「さあみんなで食べましょう。やっぱり皆んなで食べると美味しいわね。桜もより綺麗に見えるし、そうだ秋と亜里沙に携帯で動画を撮って送りましょうよ」
「いいですね〜お母さん」「そうね。秋と亜里沙もきっとびっくりするわよ。皆んなで花見してるんだから」
「そうね。はい、撮るわよー皆んな〜」
三人は笑顔で動画を撮って妹二人に送信した。
「どっちかな〜男の子かな〜?それとも女の子かな〜楽しみね」
今年の桜の花はいつもより綺麗に見えた。
恭子はいつまでも元気でいたい。そして孫の顔を見たいと心から思っていた。
「お母さん〜何笑ってるの?」
「今年の花見は楽しいな〜と思っただけよ」
ひろこと隆史は「お母さんが楽しんでくれたなら来た甲斐があった」と言って笑っていた。
完
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