現代ファンタジーもしくはホラー

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現代ファンタジーもしくはホラー

「ノボルちゃん、おなかすいたー」 「コダマ。それは30分前に飯を食った人間が吐いていい台詞じゃないぞ」 はらへりんこのコダマは、声だけ聞いても年齢や性別がわからない。 赤い髪に細身が印象的な一応女性。 ノボルちゃんと呼ばれた男は、黒い服を着て黒い眼帯をした堅気とは言い難い姿だ。 コダマは兄のノボルがちまちまと食べていたスナック菓子を奪い取り、一気に自分の口へと流し込んだ。 「何しやがる人外!」 「お気に入りのものをいつまでもとっておくからだよ。ノボルちゃん昔っからみみっちいんだから」 あわや掴み合いというところで玄関の呼び鈴が鳴った。 「は?呼び鈴?」 ノボルは首を傾げる。 この家、心置き場の呼び鈴はあまり鳴ることがない。 親しい知人ならそんなもの鳴らさずに上がってくるし、来客があれば祖母のサクが事前に気づく。 「コダマ、ばあちゃんは?」 「町内麻雀大会だって。あの人たち人間じゃないよね」 「おまえが言うな。でもその通りだな。ばあちゃんみたいな人の手の内読める人間となんて、俺なら絶対断る」 「仙人みたいな連中ばっかりらしいよ。サクばあちゃんも時々だまされるんだって」 「この町内化け物しかいねえのか」 「ノボルちゃんお客さんだよ」 「何で俺が」 ノボルは仏頂面で玄関の戸を開け放った。 「こんにちは、私、コダマさんの同級生の宮井マキといいます。コダマさんはいらっしゃいますか?」 明るくはきはきとした小柄な女性だ。 コダマと同じ年頃だろうか。 「……コダマ?あいつに友だちなんているのか?」 機嫌のよくなさそうな眼帯男ノボルに失礼な言葉を投げられても、宮井マキはびくともしなかった。 むしろたじろいだのはノボルの方だ。 宮井マキの背後には、鈍感なノボルにもわかるほど夥しい数の生霊死霊がひしめいていたからだ。 「コダマ!宮井マキさんを知ってるか?!」 ノボルは玄関で叫んだ。 「ノボルちゃん!マキちゃんが来てるの?」 「コダマちゃん!」 ひしっ。 廊下を走ってきて、コダマはマキと抱き合った。 ノボルは、何を見せられているんだろうとちょっと思った。 「何年振りかなあ。どこに行ってたの」 「パリの地下墓地とかイギリスの古城とかルーマニアの森とか」 「それでかー、毛色の違う人たちがいっぱいくっついてるもん。私でも祓うの三日はかかるよ」 「そんなのちっとも構わないよ。積もる話がいっぱいあるの」 いや構う、とノボルは思った。 どうしてこれだけ憑かれて平然としていられるのだろう。 化け物しかいない町だから仕方ない。 ノボルは無理やり自分に言い聞かせ、夕飯の準備に取り掛かった。 70886eed-c2ae-4e9c-af22-7f8775b8fc67
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