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対する松島に至っては、食べることがとにかく大好きだった。
食事はもちろんのこと、デザート、食後の甘いものまですっかりと収める『別腹』を持ち合わせていた。
「同じ会社に勤めていて、たまたま近所に住んでいる『ご飯友だち』」という立ち位置、関係性がピタリとハマった。
少なくとも藤井は、藤井だけはそう思っていた――。
しかし、バレンタインデーを目前にしたとある冬の夜に、藤井の一方的な思い込みはものの見事に崩れ去る。
松島が藤井へと想いを告げて、――つまり、『愛の告白』をしてきたのだ。
バレンタインデーを機に付き合い始めて、ちょうど半年が経った。
お互いに都合が合えば、週末前の金曜日の夜は一緒に夜ご飯を食べることになっていた。
藤井と松島のどちらかにでも、よっぽどのことが起こらない限り、大抵はその通りになった。
二人の『お約束』だった。
お盆休みが明けて早々の金曜日の夜、――そう、今夜も藤井の部屋で一緒にご飯を食べる『お約束』になっていた。
しかし、二人が席に就いているダイニングテーブルには、料理は一品も乗せられていない。
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