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在るのは、真ん中に置かれた半ば破られた包みだけだった。
それは、藤井や松島の手のひらの半分ほどの長方形のものだった。
縦にぞんざいに切り裂かれていたが、包装に描かれていた絵柄がかろうじて見極めることが出来る。
――何かの果実、果物の絵の様だった。
藤井の視線が、目線がうつむいたままの松島から、ダイニングテーブルの中央に鎮座ましている『ソレ』へと固定された。
「・・・・・・普通は、食べないだろう?普通は」
「・・・・・・」
藤井的には我慢に我慢を重ねた挙句、溜めにためてやっとのところで言ったのだろう。
『普通は』という言葉を最後にもう一度、――言わばとどめの、ダメ押しの如く繰り返した。
多分、藤井は全く意識をしないままで、衝動の赴くままに松島へと念を押したのだ。
その『普通は』結果、松島を、そして藤井本人も救けることになる――。
藤井にそこまで言われて、何なら『糾弾されて』と言い換えて言い過ぎではないくらいで、ようやく松島は顔を上げた。
まだまだ絶賛うつむき加減だったので、都合、藤井を見る目は上目づかいになってしまった。
「――だって、美味しそうな包装だったから。つい」
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