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『上目づかい』といえば=『可愛い』の代名詞だろうが、違った。
松島が藤井にとって可愛くないというわけでは、けしてない。
――ただ、今回のコレに関しては、「可愛いくないわけではないのだが、恨みつらみ方が相当に強い」というのが藤井の偽らざる感想だった。
藤井は、松島へと恨まれる謂われは、理由は全くなかった。
藤井はただ、今日、職場で貰ってきたお土産をダイニングテーブルの上へと置いただけだった。
そう――、たったそれだけのことをしただけのに、松島に恨まれ、愚痴をこぼされた。
限界だった。
とうとう藤井は吹き出し、笑い出した。
散々笑うだけ笑って、息をするのも苦しいくらいに陥った。
それも治まってからようやく、呆然と憮然としている松島へと言い放つ。
「そもそもかじる前に、匂いで気が付くだろ?石鹸だって!」
「だ、だってさ‼」
なおも言い募ろうとするには、松島にも言い分があるのだろう。
しかし、藤井にとっては、「自分がお土産に貰ってきた石鹸をダイニングテーブルの上へと置いていたら、松島がお菓子と間違えてかじった」という事実に他ならない。
それに尽きる。
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