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バレンタインデーに、職場内でバラまかれたお義理のチョコレート菓子類を、藤井も御多分にもれずに貰ってきた。
それをバラまいたのが、小山田加代という同僚の女性だった。
――松島は、それを未だに引きずっているのだ。
全くやましい身に覚えのない藤井は、松島の的外れな『ヤキモチ』を無視する。
いや、ほんの少しだけうれしい気持ちになった。
松島の手に、藤井は自分の手を重ねる。
上から押さえつける勢いで、力を込めた。
「歯型が消えるくらい、この石鹸を使おう。その後で、ご飯にしよう」
「あ、あぁ・・・・・・」
手を離して、松島へと背中を向ける。
バスルームへと向う短い間、一度だけ振り返ってみせた。
「早く来いよ」
松島が立ち上がったのを認めた藤井は、一目散にバスルームへと逃げ込んだ。
終
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