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さほど広くない長方形のダイニングテーブルを挟んで真正面に向かい合う二人の顔は、実に対照的だ。
キッチンに近い側へと座っているのは、この部屋の主の藤井智将だった。
今にも口を破り出てきそうな笑いを噛み殺すのに、必死だった。
その合間に、ベッドを背に座っている恋人の松島隆仁をチラリチラリと窺っている。
一方、松島は深くうつむいていたので、どんな表情をしているかは分からない。
左巻きのつむじが、藤井にもバッチリと見えていた。
松島が藤井の視線を避けているのは、明らかだった・・・・・・
松島と藤井は同じ会社に勤めていて、――しかも偶然、近所に住んでいた。
最寄りのスーパーマーケット『スマイル』で、松島が藤井のポイントカードを拾ったのをきっかけに知り合った。
松島はさておき、藤井はそう思っていた。
実は以前から、松島は藤井のことを気に掛けていた。
藤井本人がそのことを知ったのは、松島と『恋人』として付き合い出す段になってだ。
藤井は、料理を作るのが『好き』というより段階をとうに通り越して、もはや、『作るのが当たり前』の域に達していた。
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