【きょうで何日目かな〜】

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【きょうで何日目かな〜】

私・夏彦は、歩きへんろの旅を続けて、今日で何日目だろうか… 私は… 今、どのあたりにいるのか… 日和佐から室戸→奈半利(なはり)夜須(やす)→野市…とひたすら歩き通したと同時に、多くの時が流れた… たどりついたところは、三十一番札所・五台山竹林寺(ごだいさんちくりんじ)であった。 参拝をすませた私は、納径帳(おしゅいんちょう)朱印(しゅいん)した。 その後、私は高台から浦戸湾を見つめていた。 その時であった。 60代半ばの男性のおへんろさんが、私に声をかけた。 「すまないけれど…ケータイの充電器を持っているかな〜」 私は、四角の黒いショルダーバッグの中からケータイの充電器を取り出した。 60代半ばの男性のおへんろさんが持っているケータイは、ドコモのらくらくホン(富士通)である。 私が取り出した充電器は、ドコモの純正品である。 男性のケータイができるまでの間、私は男性と身の上ばなしをした。 私の話を聞いた男性は、おだやかな声で言うた。 「そうか…あんたはかつて弁護士さんだったのだね。」 「はい…極悪人の弁護ばかりをしていたことがイヤだったので…弁護士をやめました。」 おへんろさん同士で人生の身の上話をしている間に、男性のケータイの充電が完了した。 男性は、やさしい表情で私に言うた。 「ありがとう…助かったよ…にいさん、のんびりとゆっくりと歩いて行くのだよ。」 60代半ばの男性は、やさしい表情で『高野山(ほんざん)でまたお会いましょう。』と私に伝えた。 私は、再び旅に出た男性のおへんろさんをゆっくりと見送った。
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