ずっこけスタートダッシュ

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 大学受験を終えた私は大学デビューを目論んでいた。服装や小物類の新調、ネットでの大学生活に関する予習はもちろんのこと、SNSのアイコンまで気を配り、今度こそは意気込んでいた。高校デビューは盛大に失敗したからね。  そんな気持ちで迎えた入学式、もちろんバス停から戦闘態勢だった。私のような地味な子はこっちから話しかけにいかないと友達はできない。バス停でまず1人に話しかけようと意気込んでいたが、バスは私を待ってくれなかった。  バス停についた私はスーツの集団に紛れてステップを上がる。入学式の時間が同じなのは私の学科を合わせて2学部3学科。それだけなのにとんでもないバスの混み具合。先が思いやられる。  皆同じ場所で降りるからバスは混みっぱなし、時勢柄、混雑した場所で話すのはNG、私はこんなに人に囲まれながら孤独だった。  20分くらいバスに揺られ、大学前に到着。スクショしてきた入学式の案内を見ながら会場へ向かう。狭いキャンパスだから道には迷わない。  まず、席についたら隣前後の人に話しかける。ユーチューバーに教えてもらった大学必勝法を実践しよう。そう思って階段を上る。  1-320、社会学部政策学科の入学式会場。壁に紙が貼られていて、人が群がっている。大人びたスーツのお兄さん曰く、席が書かれているらしい。背伸びしてスマホを向ける。一発で綺麗に撮れた写真の中から私の名前を探す。  席は1つずつ空いている。これじゃあ、隣の人に話しかけづらい。斜め前の人にでも話しかければいいかな。マスクに不満げな口元を隠して、教室に入るとそこはまるでお通夜だ。 大人しく席に座ってスクリーンを見る。そこには「会話はお控えください」の文字。インドアな私にはあまり被害がないと思っていたウイルスだけれども、まさかこんなところで被害者になるとはね。  学長のお話や政策学科の先生紹介が終わり、会場を出るとさっきの静けさが噓のようにみんな話し出す。ここが勝負所だったのか。私も事前にSNSで繋がっている子を探して話しかけねば。しかし、席についていないとなると名前なんか分からない。というか群れている人ばかりで話しづらい。私はトボトボと階段を下っていった。
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