桜が咲く頃に

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「お前どこ行ってたんだよ」 案の定、勇斗の平手打ちを食らった。 「……ネカフェに泊まってた」 「――まぁいいや、とりあえず、金」 私は財布を取り出し、一万円札を渡した。 「もっとあんだろ」 「この間あげたばかりでしょ、もうそんなに渡せない」 「いいからよこせ」 「――痛っ!」 足のすねを蹴られて、仕方なく、もう一枚を差し出すと、それを奪うように握り取った。 「お前は黙って俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ。それから昨日の件、ちゃんとやれよ」 言い捨てて勇斗はいなくなった。足はまだ、じんじんと痛む。床には私の涙が、ぽつりぽつりと落ちていた。 * 昼休憩中、亮からのLINEを読み返す。 たまに彼からは届いていた。どれも心配する言葉ばかりで『大丈夫ありがとう』私は毎回それしか返さなかった。 本当は、亮に会いたい、声が聞きたい。 自分から言ったのに、躊躇(ためら)いが邪魔をした。一夜を共にしたとはいえ、彼とは不幸話を交わしただけだ。 彼に会いたいのは、寂しいからなのか、他の気持ちからなのか、自分でそれを知るのが怖かった。だって亮は、私を哀れに思って優しくしてくれただけだから。 私はスマホの画面を切り替える。“Prince”のサイトに、亮の姿はまだあった。 「三時間で二万……高い……」 ひとり呟やき溜め息をついた。でも気持ちの折り合いをつけるには、これしかない。
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