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「みっちーがマンションのパンフレット持ってきた。私たち、そういうんじゃないよねって言ったら、そうなればいいじゃんって。ちゃんと断ったのに全然わかってくれないの」
本当はランチしながら話せればと思っていたけど、みっちーに会うかもしれないから会社近くには行きたくないというヒズミに合わせ、俺は急遽午後休みをとった。多分、これも洋子専務の神経を逆撫でするはずだ。
うちの会社ともalbatrossとも全然離れた駅前のコーヒー店で落ち合ったヒズミはいつものコスチュームと違う、髪色に合った全体的に黒っぽい私服で、どこか緊張する。
「もっちー何とかしてよ」
「こっちもまずいんだよ。社長の奥さんがヒズミのこと気づいてる」
「やだ、私、悪いことしてないよ。みっちーが変なだけじゃん」
「わかってるけど、店もバレてるし、俺ももうそっちに行かない方がいいと思う」
「エイプリルフールはどうするの?」
「それは俺が何とかする。ていうか社長以外そんなに期待してないから大丈夫。どのみちあと数日だし、一人でやるよ」
「わかった。あーあ、ネタ考えるの、楽しかったのにな」
俺もだよ、という前にヒズミは席を立ってしまった。小さな背中はかなり憔悴してて、俺は泣きそうになる。
俺も楽しかった。結局chatterはうまくいってないけど、ヒズミとくだらないことを話せて。せっかく友達になれたのに。もしかしたら、もっと仲良くなれたかもしれないのに。もう会えないのだろうか。クソ、みっちーめ。
結局、俺は怒りと焦りを糧に考えたエイプリルフールネタ、ネジを束にしてシメジに見たてた「新商品 シネジ」の写真を四月一日になるなりやっつけで投稿した。
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