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「ネジばっかじゃん」
二週間ぶりのalbatross、呼び出された俺はさっそくヒズミにダメ出しをされた。
「ネジネジネジネジ、ネジの写真ばっか載せても仕方なくない?」
「でも何人かフォロワーつきましたよ」
「そんなネジマニアはほっといても嗅ぎつけるって。そうじゃなくてみっちーはたくさんの人に会社のこと知ってほしいんでしょ。そこをどうにかするのがもっちーでしょ」
「そう言われても何も思いつかないし、社内のネタ募集も反応ないんです」
「何それ。みっちーかわいそう」
ため息をつくヒズミに俺はちょっとイラつく。大きな口を叩いているけど、ヒズミのアカウントだって別に大したことないのだ。数百人いるフォロワーはほとんどがヒズミ自身もフォローバックしてる「お互い様」な感じだし、残りは店の客ばかり。純粋にヒズミの投稿に興味をひかれてる人なんてごくわずかだろう。そんな奴にネタがどうこう言われたくない。
「ヒズミさんは本当に社長思いなんですね」
「え、もしかしてもっちー、嫉妬?やだぁ、そんなんじゃないから」
不満気な俺に何を勘違いしたのか、ヒズミがパグっぽい瞳を一層きゅるっとさせる。いや、待て。こっちこそ、そんなんじゃない。
「私はもっちーのことだって大事に思ってるよ。もっと会いに来てよ。二人でちゃんとchatterやろ」
「えっと」
「大丈夫、みっちーには秘密」
きゅるきゅるっとした上目遣いでトドメを刺そうとしてくる。やめてくれ、俺をターゲットにしないでくれ。秘密にしたところで社長に後ろめたいし、そもそも君はタイプじゃない。
でもそんなことは言えない。
一応社長の肝入りであるchatterエイプリルフール企画は、ヒズミにいいとこ見せたいって社長の思惑も透けて見える以上、社畜の俺が彼女の機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。
「明日は来れる?予約もできるよ」
「はは、いやぁ〜」
乾いた笑いでごまかす俺に「もう、もっちー、面白〜い」とヒズミはきゅるきゅるきゅるきゅるした。
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