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「俺が好きだと言ったくせに、浮気者め」
「ええ!? 勿論好きです! 飛龍様とは比べ物にならないくらい大好きです!」
「どうだかな。大体、以前から思っていたが、お前は飛龍と仲が良すぎじゃないか?」
「仲が良い…………? え? そう見えますか? 本当に……? 私と飛龍様がですか?」
いくら思い返しても飛龍とは言い合いをしている回数の方が多い。どこをどう見てそのような判断がなされたのだろうか。
不思議に思っていると、通路の向こう側から聞き慣れた楽しげな声がした。
「ねえねえ、ひょっとして俺の話してるぅ?」
飛龍だ。閻魔王に裁判の仕事がないということは、宋帝王にもないということ。彼も暇していたのだろう。
隣の帝哀があからさまに眉を寄せた。
「何だよその顔。俺がいちゃおかしい? ここは俺の区域だよ? どっちかって言うと、何で帝哀がこっちに来てるのかの方が不思議なんだけど」
飛龍はその緑色の眼を光らせて言う。
「もしかして、紅花に会いに来たの?」
帝哀は淡々と、「ああ」と短く肯定する。
意外だと思ったのか、飛龍の口角がゆるりと弧を描いた。
「ふうん。いつの間にそんなに仲良くなったんだか」
「毎日共に寝ている仲だからな」
さらりと飛龍に一緒に寝ていることを暴露され、紅花の顔が熱くなる。
「……聞いてないけど?」
飛龍がじとりと紅花を見つめる。
「……別に飛龍様に伝える必要性もないでしょう」
「君、冷宮で寝てるんじゃなかったの?」
「結構前から、夜は帝哀様の養心殿へ行くようになったのよ」
「へえー? ふ~ん? やーらし。そんなことしてたの、帝哀」
飛龍はにやにやしながら、今度は帝哀に視線を移す。
「俺がその女に手を出すことに何か不都合でも?」
ぴしりと飛龍と帝哀の間の空気が凍ったような気がした。
「何その態度。言っとくけどねえ、紅花は俺が先に見つけたんだよ?」
飛龍の目が笑っていない。
「先に見つけたから何だ? 紅花は俺に会いに後宮に来たんだが」
帝哀も、心なしかぴりついているように見える。
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