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(な……何よこの空気……)
相対する飛龍と帝哀を交互に見つめながら居心地の悪さを感じていると、そこへ文通鬼が走ってきた。
「手紙です! 手紙でーす! 紅花様宛てでぇ~す! って、わァ!! ひっ、何で十王様がこんな狭いところに!?」
様々な文を何十通も預かって運んでいるであろう文通鬼は、大きな袋を持ったまま飛龍と帝哀の姿を見て腰を抜かした。
確かに、十王のうちの二人がこんなところに固まっているのは不自然だ。紅花は驚いて声も出なくなった様子の文通鬼から手紙を受け取った。
文字を読めないので、傍にいる帝哀に内容を確認してもらった。
「長子からだな。〝茶を用意した、今日中に来い〟と書かれている」
「元宵節の前日なのに、忙しくないのでしょうか……」
「準備は早々に終わっていて、逆に今暇なんだろう。それより……お前は俺にだけ畏まっているな」
「え?」
「飛龍には馴れ馴れしい口調だ」
意図が分からず戸惑っていると、飛龍が紅花の首根っこを掴んで自分の近くに引き寄せる。
「なぁに~? 紅花に友達みたいに接してほしいってことー? 俺らが仲良しすぎて羨ましーの?」
「…………」
「ま、しょうがないよねえ。実際、仲良しだし」
また空気が凍る。腰が抜けたままの文通鬼が地面を這って逃げていくのを見て、紅花も「あの……長子皇后様に呼ばれているので…………」とか細い声で伝えてその場を去った。
少し距離を置いてから後ろを振り返ると、二人はまだ何か喋っているようだった。
(あの二人、仲良かったはずだけど……)
何だか今日はどちらも不機嫌だった。不思議に思いながら、運び鬼を利用して閻魔王の区域へ向かう。今日は門番がいないため、比較的区域間の移動が自由だ。
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