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「嬢ちゃん、それ、何しようとしてるか分かってんのか?」
「分かった上でやってるわ。これがうまくいけば長子皇后様は皇后の称号を剥奪される。こんな機会を逃すわけにはいかない」
「嬢ちゃんが帝哀様のことが大好きなのは知ってたけどよ……まさかそれ程とは……」
魑魅斬は心底呆れたような声を出す。
「嬢ちゃんの力になってやりてぇところだが、さすがに反逆の手伝いをするのは無理だ。俺は帰らせてもらう」
「その方がいいわ。貴方をこんなことに巻き込んだら玉風姉様が怒りそうだし」
「……念の為確認だが、実際に王に攻撃するつもりはないんだよな?」
「ええ、あくまでも幽鬼が大量に現場にやってきたという事実だけが欲しい」
そう言うと、魑魅斬は少し考えるような素振りをした後、観念したように言った。
「なら、俺は広場で幽鬼や狂鬼を迎え撃つ。王には掠り傷一つ付けねえようにするよ。鬼殺しとしてな」
どうやら、王を守るという点では手伝ってくれるらしい。
ぽりぽりと頭を掻きながら立ち去っていく魑魅斬の背中に向かって言う。
「私もすぐに行く。それまでよろしく頼むわよ」
鬼殺しとしてずっと共に活動してきた、兄貴分の背中。そこに紅花は絶大な信頼を置いている。そんな彼が協力してくれる状況になったことで、少しだけ落ち着くことができた。
「おいおい、俺抜きで何の話してたんだァ?」
掃除鬼が不思議そうに近付いてきたので、改めて地図を開きながら、連れて行ってほしい場所を伝えた。
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