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序章
「君がこれほど自殺を志願していたとは驚きだ」
私の志望書に目を通した超能力部隊の隊長は、すぐにそれをシュレッダーに掛けた。戦争が始まろうとしているこのご時世に軍隊に入ろうとする若者が自殺志願者扱いされるということは分かっている。
それが超能力部隊に入ることを志望している“女”なら尚更だ。
「知っているだろう。日本帝国軍超能力部隊は8年前から女性禁制になった。私にいくら訴えようと制度が変更されることはないよ」
そんなことはもう何度も聞いた。
同じことしか言えないのか、この堅物は。
「今日本帝国に最も必要なことは、高性能兵器を開発する為の技術力、経済力です。――私の能力があれば軍事費の削減に繋がりますよ。その分を開発に回せばいい」
「…何故そこまでしようとする?」
「私は、どうしてもこの戦争に勝ちたいんです」
隊長は深く考えるように黙った。
よし、もう一押し――これで駄目だったら、隊長の持ってる端末の中にある数々の浮気相手との連絡内容を奥さんに送ると脅すしかない。
「私を超能力部隊に入れてください。絶対にバレるようなヘマはしません」
隊長と私は数秒睨み合ったが、――負けたのは隊長の方だった。
「どうなっても責任は取らない。仮にバレたとしても私は知らなかったを貫き通す。全て君の責任になる。それでもいいかな?」
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