2. 彼の大学

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2. 彼の大学

 いつしか、付き合うようになっていた。  たまたま、仕事の終わりが一緒になると、夕食を一緒にしたり。  初めはその程度。  1年ほど経った頃、友彦が言った。 「今度、大学に遊びにおいでよ」 「えーっ、いいの?」 「大丈夫だよ。俺と一緒なら」  文学部に入っていろいろ勉強してみたいと思っていたけど、経済的にできなかった美千代は、彼の誘いに、二つ返事でOKした。  新緑のポプラ並木。  新年度がスタートして間もない、希望に満ちた構内。  授業に出ることはできなかったけれど、一緒に歩くだけで楽しかった。 「私もここで勉強したかったなぁ……」 「それなら、公開講座っていう手もあるよ」 「そういうの、あるんだ?」 「うん。週1で通うのとか。講座の種類も、いろいろあるみたい」  連れていってくれた学食で、早めの夕食を食べながら、彼はそんな話をしてくれた。  ネットで調べてみると、美千代の興味のある平安文学の講座があった。  ちょうど仕事が休みの曜日だったこともあり、さっそく申し込んだ。  講義が終わると、友彦と待ち合わせて、学食で夕飯を食べて帰る。  そこで、講義の内容がこんなに面白かったんだよと、つい熱が入ることも。  美千代の話を、友彦は、興味などないはずなのに、ずっと笑顔で聞いてくれていた。 「同じS大生どうしみたいで、楽しいよ」  ある時、そんなふうに言ってくれた。  充実していて、幸せな日々だった。  それから、休みが一緒の日は、よく二人で出かけるようになった。  ただ、お金がない二人は、街をぶらぶら歩いてランチをする程度の、安上がりなもの。  季節が流れ、粉雪の舞うクリスマスイブの日。  講座の最終回を終えた美千代は、待ち合わせていた友彦と、いつものように学食へ行こうとすると、彼が、 「今日は街に出て食べないか?」 「えっ?」 「ほら、イブだろ?」  ニコリとする彼。  最後の講義を終えたばかりで、テンションが高かった美千代も、 「それいいね!」  すぐにOKした。が、雪の中、街を歩くうちに冷静になってきた美千代は、 「友彦くん、ごめん。やっぱ、学食にしない?」 「えーっ……」 「お金、なくて……」  申し訳なさそうに、首をすくめる。  公開講座に使ってしまったのもあって、金欠状態なのだ。 「なら……」 友彦が、いいことを思い付いた、という顔をして、 「今夜は俺が出すよ」 「えー、いいよ。それじゃあ……」 「あっ、そっか。そうだよね」  すぐに引っ込める彼。そう。彼はちゃんと、美千代のことを分かってくれているのだ。  貧乏な家庭で育った美千代は、 (自分の分は、自分で)  その気持ちが、より強かったのだ。 「それなら……」  と、彼はまたいい案を考えた、というように、 「うちに来いよ」  と笑顔を向けた。
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