2. 彼の大学

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「えっ?」  初めて彼の部屋に誘われたことの嬉しさと戸惑い。  彼は続けて、 「食べ物とか、店で調達して。うちでクリスマスしようよ」 「……」 (行きたい。けど……)  期待と、ちょっぴり抵抗感……返事ができずにいると、 「そこから地下鉄で3つ目なんだ」  友彦はもう歩き出していた。  慌てて付いていくうちに、美千代の心の中で、イブを彼の部屋で過ごすことへの誘惑が勝っていった。  地下鉄を降り、外へ出ると、横断歩道を渡った先に大きなスーパーマーケットがあった。 「あそこで、フライドチキン買っていこう。それに、シャンパンも」 「うん」  もうすっかり、彼の部屋でのクリスマスに期待が膨らむ美千代。  ところが、イブの夜。出来合いのフライドチキンは、2人分買うにはかなりの高価だった。 「私が、照り焼きチキン作るよ」  美千代が提案する。 「えっ?」 「お醤油と、みりんと、お酒、それにお砂糖ある?」 「あるよ」 「あるの!?」  全部は無理だろうと、ダメ元で訊いたのだが、その返事にびっくりすると、 「一応、自炊してるから」  照れ臭そうにする。その表情に、ときめきを覚えながら、 「じゃあ、鶏もも肉だけ買って帰ろう」  と言って、 (しまった!)  と思っても、後の祭り。 (帰ろう、なんて……)  恥かしいのを隠したくて、精肉売り場へと急ぎ足で向かう。  後から付いてきた友彦に、骨付きのもも肉を2パック指差し、 「これがいいね」 「うん」  微笑む友彦に、美千代も自然と微笑がこぼれた。
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