4. お別れ会

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「なんでこの歌……」  思わず呟く。 (今この歌を聴くのは、ちょっとツラい)  寄り添ってくれるはずのお別れソングなのに、そんな気持ちになることもあるんだ…… そう思っていると、友彦が戻ってきた。  彼も同じ思いなのか、グラスを置くや、端末を持って、ササッと入力した。そして、 「さ、歌おう!」  と言ってジンジャーエールをひと口、ゴクリと飲んだ。  始まったのは、あいみょんさんの『裸の心』。  扉が閉まっていても、かすかに聞こえてくる隣の部屋の声に被せるように、大きな声で歌う友彦。  美千代も口ずさんでいると、2番に入るところで、彼が、もう一本のマイクを美千代に手渡しした。  受け取りながら見ると、彼は「うん」と頷きながら微笑した。  歌い切ったところで、 「ねえ、なんで『裸の心』?」  美千代の言葉に、友彦はまた微笑を向けて、 「この恋が、実りますように……って」 「……」 (そうだよね、そうだよね)  そう言いたかったのに、先に涙が込み上げてきて声に出せなかった。  ジンジャーエールを飲む彼から、洟をすする音がした。  その後で、彼が美千代をそっと抱き寄せ、 「一緒に東京へ出よう」  そう言った。 (私にも、こっちの生活がある)  そう思ったけれど、 (今を逃したら、この恋は、もう実らないかもしれない)  友彦の姿に、美千代はそう感じ、 「行く」  と返事をした。
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