空腹の幻影

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 お腹が空いた。  俺は、そう思った。  お腹が空いたので、 「おい、お腹が空いたぞ!」  と、叫んでみる。  だが、しんっと部屋は、俺の声が響くだけで、何の言葉も返って来ない。 「おい、聞いているのか! 俺は腹が減っているんだ‼」  さらに大きな声で叫んでやると。 「柴田さんのお食事は、終わりました」  カチャっと扉が開いて、長身の若い女性が入って来た。 「俺は腹が減っている!」 「お食事は、午後五時に終了しています。これ以上のカロリー摂取は、お体に良くありません」 「うるさい、俺は腹が減っていると言っているだろう‼」  苛立ちのあまり、俺はそう叫んだ。 「お腹が減っているという認識は、ないはずです。あなたは食事を終了しています」
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