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「――と言うわけだ。貴公は我が娘と息子に、借りを作ったこと努々忘れないでもらおう」
「ハッ。この恩情、生涯片時も忘れず、・アレクシス・フローレス・フォン・エドワーズの名に誓って、ソフィーリア・ラウンドルフ・フランシス王女殿下、ジェラルド・ラウンドルフ・フランシス殿下に対して刃を向けないと誓います」
「!」
妖精王オーレ・ルゲイエはアレクシス殿下の誓いに口元を緩めた。まるで最初からこの言葉を引き出すのが目的だったかのように、緩やかに言霊魔法を展開する。
(あれは古の魔法の一つ!)
「良いだろう。妖精王である私がその言霊の結びを束ね、契約はなされた。もしこの誓いを破れば、その災いはお前自身、引いては国に訪れると思え」
「承知しました」
(これって……今ので私がアレクシス殿に殺される可能性が消えたんじゃ?)
妖精王の偉大さに呆けていると、彼は私の頭を撫でた。その手はとても大きくて温かくて、懐かしい。
「じい様、ありがとう」
「なに構わないさ~。なんたって私はそなたの『じい様』だからな。……今まで傍に居たのに介入出来ず、すまなかった」
最後の言葉は囁くように私に告げた。
それは十二回の時間跳躍のことだろうか。
十三回目は始まる時間軸も異なっている。さらにジェラルド兄様とのやり取りはもちろん、ここでアレクシス殿下と会うこともなかった。
オーレ・ルゲイエには色々と聞きたいことがあるが、今はアレクシス殿下たちと話を詰めるほうが先だと気持ちを切り替えた。母様に抱っこされつつも、毅然とした態度で話し合いに参加する。
場所も王の間から客間にアレクシス殿下たちを通して、必要な食糧量と運搬や搬送などもろもろスケジュールを調整していく。
こういった時、本当にジェラルド兄様の演算能力は役に立つ。アレクシス殿下や付き添いの騎士は兄様の有能さを知って感服していた。次期宰相として申し分ない。私は小さく拍手を贈った。やっぱり兄様は天才だ。
(これなら兄様も自信がつくし、ハート皇国との良縁も結べて……よかったわ……)
その後は私の出る幕はなく、父とジェラルド兄様が話を詰めてくれたようだ。というのも緊張が解けたのか、いつの間にか私は寝落ちしてしまったのである。
八歳の身体では二十三時まで起きていられなかったのだろう。お子様の体は大変なのだ。
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