special thanks!

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 波音が聞こえる無人駅で降りてから、歩道橋を渡って、防風林の傍らを歩いた。夕陽はいつの間にか沈んでいて、海の向こうに僅かだけの赤色の名残を残すのみ。  擦りむいた傷に巻いた絆創膏みたいに、じくじく、滲んだ色を翳らせていく。 「相浦くんって、誰かに迷惑かけないように一人でいるんだよね」  そして防風林の中頃、丘のようになっている辺り。廃れた神社にでも続いていそうな古びた階段があって、そこに腰掛けながら、結菜さんが言う。 「いつの間にか鍵を閉める役になってたのとかも、そう。誰かの邪魔にならないようにするの上手って思ってた」  階段の中頃に1段だけ、苔も水気もないきれいな石があった。それでもスカートが汚れるんじゃないかと気になる俺をよそに、空を仰ぐように身を反らして、足をパタパタさせながら、続ける。 「私が、そうだったから。だから相浦くんもそうなのかなって思うだけだけど」  下手な秘密なんかよりもよっぽど、打ち明け話みたいに感慨混じりの声色。相づちを挟んで良いのかも分からなくて、俺はただ、頷く他ない。声一つ出てきてくれない静かな、夜の手前。 「それで、多分、こんな話しても笑わないでいてくれるって。私、勝手にそう思ってたから」  夕方の色なんて、もう探しても見つからないような、夜のような空なのに。  眩しげに目を細めてから、結菜さんは俺を見て、困ったような笑みを見せた。 「……和中くんのこと、好きになっちゃって。どうしようって思った時。多分、誰に聞いても『心配しなくていい』『悩むのは後で』って言われる気がしてた。私も、聞かれたらそう言うと思う」  そして目が眩んだみたいな表情のまま、結菜さんはまた空を見上げる。  つられて見上げれば、いつの間にか小さな星達がキラキラと、笑い合うみたいに瞬いていた。 「本当にその方が良いって、分かってるのに。私、まだそこまでじゃない、そんなに軽々とは思えない、ってなってた。そしたら」  そんな賑やかな空を、まるで振り返るみたいに寂しそうな笑みで、結菜さんが言葉を続ける。独り言みたいに、相づちも待たないままなのに。 「相浦くんなら、もしかして……って思ったの。ごめんね、今更こんなこと言って」  間違いなく俺に向けて、何かしらの感情が混じって、本音で話してくれる。
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