嘘と真実

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桜が満開で風が心地よい春の日 笹谷涼介(ささやりょうすけ)は春休みに告白された 「ずっと好きでした!付き合ってください」 幼なじみの中山紗良(なかやまさら)は目の前でイタズラをする子供のような顔で告白した 「断る」 「なんでーーー!」 「お前今日エイプリルフールだから告っただろ」 「そ、そんなこと…」 「毎年恒例になってるんだから気づくわ普通」 通算10回 紗良は7歳の頃から毎年欠かさず エイプリルフールの日に涼介に告白をしている 「バレてるならおもしろくない…」 「始めたのはお前だろ」 「だってぇ!涼介はさ名前のくせに陰キャだし」 「悪かったな国民的アイドルじゃなくて」 「私が世話してあげないとじゃん?」 「だからなんでそうなるんだよ」 最高の笑顔で紗良は言った 「だってずっと一緒にいるからね!」 「毎年告白してくれるのは嬉しいけどな1つ言わなきゃならないことがある」 「なにー?」 涼介は急に真剣な顔になる 「俺彼女できたからそういうのはもう辞めてくれ」 「え?」 「だから彼女いるから俺に構うの辞めろ」 「涼介にか、彼女??」 「そんなに不思議かよ」 紗良の頭はショートしかけていた 「だ、誰なの?」 「熱川(あたがわ)さん」 熱川奈々(あたがわなな)は2人と同じクラスだった 涼介と奈々はお互い陰キャで仲が良かった 「あ、あ、熱川さん…たしかにお似合いかもね」 「ありがとう」 紗良の目には涙が滲む 「2人のこと応援してるよ」 「そーしてくれ」 「熱川さんってさ本当に涼介とお似合い…」 風が少し強くなる 「それ泣きながら言うことか?」 紗良の目に浮かぶ涙を涼介が拭う 「嘘だよ。嘘」 「へ?」 「エイプリルフールだろ?今の全部嘘」 頭が追いつかない放心状態の紗良に涼介が言う 「俺が好きなのは紗良だけだからな」 「ま、待って」 「ん?」 「それもどーせ嘘なんでしょ!エイプリルフールだから」 「あはは」と大声で涼介が笑う 何にも面白いことを言ってないのに子供のように泣き笑いをしている 「いいか、嘘をついていいのは午前中まで今はもう午後だぞ」 携帯で時間を確認すると午後0時03分と書いてあった 「え?どいうこと?じゃあ熱川さんと付き合ってるの?」 「どーしてそうなる。熱川とは付き合ってねーって」 「え?じゃあ何?」 困惑してる紗良に涼介は真面目な顔をする 「俺は本当に紗良が好きだ。だから10年間ついてきた嘘を本当にしないか?」 「ほんと?」 「だからそう言ってるだろ」 「私も本当は大好き!!!」 紗良が涼介に抱きつく お互い腰に手をあてる 「今まで嘘って言ってごめんね」 「ん?嘘っていうのが嘘だったんだろ?」 「うん!涼介大好き」 「俺も紗良が大好き」 言えない気持ちをずっとエイプリルフールで嘘に混ぜ続けた いつか嘘が本当になるように願い続けながら 嘘が本当になった時2人の愛は今までよりもさらに大きくなる
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