第2章

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 結局、今日は冬月と一緒に登校してしまった。二人並んで歩いている間、どれだけ周りから不審な目で見られたことか。女子からは、まあいい。冬月は顔だけはいいからか、女子から人気があるらしい。  だが、男子からは完全にヤンキーとパシリという目で見られている。友達じゃねえから、べつにどう見られたっていいけど。  四組の教室に入り自分の席についた瞬間、ようやく一人になれた。と思ったのだが。 「一時間目は現代文だよね?」 「ああ、そっか。お前、隣の席だったな」 「全部、声に出てるよ」 「出してんだよ」 「宿題やってきた?」 「やった、やった」  話すのが面倒になり、ホームルームが始まる前から寝ることにした。冬月もさすがに授業中は話しかけてこないだろうが、朝から眠いものは眠い。机に伏せて目を閉じると、すぐに眠気が襲ってきた。  二時間目は数学、三時間目は英語、四時間目は化学。現代文のあとは何とか起き、英語の時間にまた寝る。十分休憩の間は、冬月に話かけられないようにするために寝たふりをした。  そして昼休みがはじまるころ、やけに静かだと思い隣の席を見ると、チャイムが鳴り終わったというのに冬月は机に開いたままの教科書とノートをじっと見つめていた。ちょうどいい。このまま一人で屋上に行こうと思い席を立った。 「ねえ、時坂くん」 「あ?」 「さっきのここ先生の解説がよくわからなかったんだけど……」  俺に勉強を聞くのか? 冬月のノートを覗き込んでみてさすがに驚いた。 「お前、これ……」 「ちゃんとノートとってたんだけど、わからなくて」  冬月のノートには端から端までぎっしり文章が書いてあった。メモを取りすぎて、重要な点がわからなくなっている。 「お前、黒板に書いてあることと教師が言ったこと全部書いてんの?」 「うん」 「バカなの?」  冬月はあからさまに悲しそうな目をした。 「時坂くんにだけは言われたくなかった」 「喧嘩売ってんのか」  俺はバカな自覚あるけど、一番やばいのはバカな自覚がないバカだからな。 「あのなあ、何でもかんでもメモればいいってもんじゃねえんだよ。あと重要なところは赤線引くとか工夫しろ。これじゃ、読み返したときに何がなんだかわかんねえだろうが」 「そっか! じゃあ、時坂くんのノート見せて?」 「何でだよ」 「参考にしたいし」  これ以上長く話すのも面倒だったので、さっきの化学のノートを渡した。 「うわ、すごい! 見やすいね!」  高校受験のために勉強をはじめたころは、ノートの取り方から教わった。当時はそもそもノートすら持ってなかったからな。 「でも字の形が変で、読めないや」 「しばくぞ!」  冬月からノートを取り上げて、コンビニの袋を片手にさっさと屋上へと向かった。
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