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確かに湊斗の身長は185センチを超えている。筋肉質でガタイもいい。
そんな湊斗からすると、陸が小さく見えてしまうのは致し方ないが……。
身長コンプレックスのある陸に、身長の話は禁句なのだ。それは全校生徒の暗黙の了解でもある。
それでも敢えてその話題を持ち出してくるということは、湊斗は本気で陸に喧嘩を売っているということだ。
――けれど。
「そんなに俺に負けっぱなしが悔しいんだ? でも俺、喧嘩はもうしないって決めたんだよね」
「何だと?」
「お前も知ってるでしょ? 俺さぁ、家が結構金持ちなんだよ。でも出来のいい兄が二人もいるし、おまけに後妻だし、色々居心地悪くてさ。反抗心だけでここに入って馬鹿やって……でも今ごろ、俺が必要になったって言うんだよなぁ」
「――は? え? お前、急に何の話……」
「まぁとにかく、俺、明日の朝の便でロスに発つんだ。あっちの大学入って勉強しながら、父親の仕事の手伝いすんだよ」
「……!?!?!?」
陸の突然すぎる告白に、湊斗は目を白黒させて混乱する。
どうやら脳みそがキャパオーバーのようである。
当然陸の方もそれを理解した上で、今こうして湊斗に話しているわけだが……。
「なっ――、おま……、それ……それは……お前……、お前はそれで……本当に、いいのか……?」
困惑した様子で陸に問いかける湊斗。
その目は、陸が心配で仕方がないと言っていた。本当は嫌なのではないかと、陸の身を案じていた。
三年間、犬猿の仲だった相手を、湊斗は本気で心配してくれている。
「本当に、お前は納得してるのか?」
「……はっ? そんなの、そうに決まってるだろ」
「――本当か?」
「……ああ」
「本当の本当の本当にか?」
「…………だから、そうだって」
「――いや、嘘だな」
「……っ」
「嘘だ」
「…………何で」
「俺にはわかんだよ。お前は本当は嫌なんだ。お前と毎日喧嘩してた俺が言うんだ。間違いねぇ」
「……は……何だよ……その理由……。……馬鹿じゃないのか」
――本当は気が付いていた。
自分の気持ちに、陸はちゃんと気が付いていた。それでももう決まったことだからと、自分を無理やり納得させていた。
だが今さら何を言っても遅い。
これはもう決まったことなのだ。覆すことなどできない。
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