サチのサチはサチの手で

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サチのサチはサチの手で

「やったやった! 優勝だ」  三年生として迎えた最後の大会。私たちのチームは全国制覇を果たした。この歓喜の輪に自分なんかが加われたことは信じられない。  と言っても大会での私の出番はほんの少し。準決勝と決勝に関してはエースの真裕が全部投げ切り、私はほぼベンチで待機しているだけだった。  更に言えば紗愛蘭や京子、ゆりに菜々花、そして嵐たち同級生は皆、大会を通じてレギュラーとしてグラウンドに立ち続けていた。日本一になれたことは当然嬉しかったが、自分自身のことを振り返るとやるせなさが込み上げてくる。  私はチームで唯一、高校から野球を始めた。この三年間はチームメイトと肩を並べられるようになりたい一心で必死に食らい付き、何とか最後の大会で優勝メンバーの一員になることができた。  けれどそれだけでは私の心は満たされなかった。もっともっと試合に出て活躍したかった。同級生たちに追い付くだけに留まらず、追い抜いてみせたかった。そう思うと悔しさがどんどん大きくなる。だから私は、高校を卒業してからも野球を続けると決めた。  しかし現実は甘くない。大会が終わると部を引退したなかまたちの元には大学や社会人チームからスカウトの話が舞い込む。主将の紗愛蘭は複数の強豪から、真裕に至ってはプロチームから勧誘があったそうだ。  対して私には一向に話が来ない。全国制覇したチームに所属していたとはいえ、所詮は控え投手。登板機会はエースどころか下級生よりも少ない。そんな選手を態々スカウトしようとは思わないだろう。
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