交わる希望に導かれ

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 野球を辞めることに関して私自身に後悔は無い。そもそも本来なら高校で野球をやっていなかった。真裕たちの勧誘をきっかけに野球部へ入部したのだ。甲子園球場でプレー、更には全国大会で優勝することができた。チームの皆と出会えたことは幸運だったし、私は本当に幸せ者だと思う。それなのに未練などどうしてあろうか。  夏休み中はもちろん、休みが明けた後も私は受験勉強に力を注いだ。野球部の練習に時折参加する同級生もいたが、私は一切しなかった。部に顔を出すことで気の緩みに繋がってしまうのが嫌だったからだ。  そんな日常を送っていたある日、私の元に一つの知らせが届く。真裕がプロ野球選手になるというのだ。このこと自体には驚きは無い。私にさえ社会人チームなどからオファーが来るのだから、真裕の実力であればプロ野球チームが目を付けるのも頷ける。  その一方で、真裕は大学に行きながらプロ選手として活動する予定だと言う。一概に比較することはできないものの、彼女は私が出来ないと思っている道に挑もうとしている。素直に凄いと思う反面、胸の奥にはふとした蟠りが芽生える。  だが私はこれらの感情を忘れるかの如く勉強に没頭した。模試の成績に一喜一憂してはならないのと同じく、他人の進路に振り回されてもいけない。自分のやりたいことを決めた以上、今はその実現に向けて一心に努力するしかないのだ。野球部でもそうやってきた。
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