交わる希望に導かれ

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 それから季節は瞬く間に巡り、受験シーズンに突入した。まずは一月の共通テスト。私は完璧とはいかないまでも納得の行く点数を取ることはできた。第一志望の二段階選抜も通過でき、一ヶ月後の二次試験へと進む。  二次試験は筆記と併せて面接も行われる。筆記が良くても面接で落とされるケースもあるので、こちらの対策も欠かさなかった。主将をやっていたおかげで人前にたって話すことや質問に答えることに対しての抵抗は無く、その点は非常に活きたと思う。  そうして全ての試験が終わり、合格発表の日を迎える。合格者は大学のホームページに掲載されるため、私は一人、自分の部屋で結果を確認する。 「……あ、あった。あった!」  自分の番号を発見した瞬間、私は何度も見間違えではないか確かめた。夢ではない。私は紛れもなく第一志望の大学に合格したのだ。  これで私は念願の医学部で学べる。同時に、野球からは距離を置くこととなる。……そう思っていた矢先の出来事だった。 《悪い紗愛蘭、時間のある時に学校に来てもらっても良いか?》  大学入学に備えて過ごしていたある日、木場監督から急に亀高へと呼び出された。卒業生としての訪問となるが、日が浅過ぎて実感は湧かない。そんな呑気な気分で職員室に入ると、監督と一緒にスーツ姿の見知らぬ女性が待っていた。
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