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「監督、こんにちは。えっと、この方は……」
「初めまして踽々莉さん。私は株式会社ヨツビン、女子野球部マネージャーの中野と申します」
中野と名乗る女性は、私に挨拶すると共に名刺を渡してくる。野球関係の話をしにきたようだが、医学部に合格できた以上もう私にはプレーする意思が無い。それは監督にも伝えている。
「実はですね、踽々莉さんにヨツビン野球部の活動に参加してもらいたいと思っていて、今日はその話をさせていただきに参りました」
「ああ……。お誘いは嬉しいのですが、私としては大学での勉強に専念したいと思っていて……」
「それについて監督様からも伺っております。なので私たちは、踽々莉さんを臨時コーチという形で迎え入れたいのです」
「臨時コーチ?」
寝耳に水とは正にこのこと。驚く私に中野さんが説明を加える。
「はい。基本的には学業に重きを置いてもらいつつ、時間ができた時にチームの練習や試合を見て指導をしていただければと思っています。もちろん報酬も出しますし、表現は悪いですがバイトのような感覚で来てもらえば大丈夫です」
そんな緩い感じが本当に許されるのか。仮に許されたとして、そもそも高校で引退した人間が社会人の選手を指導できるとは思えない。そうした疑問に答えるかのように、中野さんが続ける。
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