交わる希望に導かれ

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「実は私たちヨツビンの女子野球部は発足したばかりでして、選手個々の実力だけでなく、野球をよく知る指導者も不足しているんです。だから踽々莉さんの力を少しでも良いので貸していただけると、とっても助かります」  中野さんは切実に訴える。その熱い想いが私の心の炎を仄かながら再燃させる。 「……もしかしたら、ほとんど顔を出せないかもしれません。ほんとにそれでも良いですか?」 「もちろんです。それでも私たちは踽々莉さんの力が欲しいんです」 「……分かりました。その話、お受けします」  私は力強く首を縦に振る。中野さんの気持ちに応えたい。ただそれだけではない。結局私は、野球との繋がりを断ちたくないのだ。その希望が僅かでもあるのなら、それに縋りたい。  自分でも身勝手な理由だとは思う。けれどもそれが中野さんたちの、ヨツビン野球部の力になるのだとすれば、私としてもありがたい。 「本当ですか! よろしくお願いします!」  中野さんは仔犬のような笑みを浮かべる。社会人なので自分よりも歳上のお姉さんだと思うが、その表現はとても可愛らしい。こうして私は四月から大学生となる傍ら、ヨツビン野球部の臨時コーチとなった。  しかし、物語はこれで終わらなかった。私がコーチになってから少し先の未来の話。グラウンドには、とあるコールが響いていた――。 《……バッターは、三番ライト、踽々莉さん》 Go to next stage……
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