サチのサチはサチの手で

2/4
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 それでも私の野球を続ける意志は変わらなかった。勧誘が来ないのなら自分から入るしかない。私は女子野球部のある大学を徹底的に調べ、学力や野球部の強さ、通学のしやすさなどから候補を絞った。  まず挙がったのは地元の楽師館大学と教知大学。どちらも実家から離れることなく通学できる。ただし楽師館は全国的に見てもかなりの強豪であり、県内外から実力者が挙って集まってくる。亀高の先輩も何人か進学しているが、仲間を蹴落とすほどの苛烈な競争を勝ち残らないと試合にも出られないらしい。今の私では競争の輪にも入れない可能性がある。  一方の教知大学は国公立ともあって学力が高く、入るためには勉強の成績を上げる必要がある。だがそれ以上の懸念点は野球部のレベルだ。お世辞にも強いとは言えず、勝敗は二の次で野球をやること自体が目的のチームに思える。場所を選べるような立場でないことは承知しているものの、できることなら勝利を求めているチームでプレーしたい。  そうなると次は県外に目を向けることとなる。両親に一人暮らしをする許可は得られたため、この辺りから行きやすい関東や関西の大学を中心に探す。すると三校ほど候補が見つかり、監督に相談してみる。 「ふむ……。この中だったら神奈川(かながわ)翡翠(ひすい)が良いかもな」  監督に勧められたのは、横浜にある神奈川翡翠大学だった。関東では名の知れた大学で、卒業後の進路は幅広い。肝心の野球部も全国大会で上位に進出した年もあり、実績も申し分無い。その上で私にもレギュラーを張るチャンスが十分にあると判断してくれた。 「そうですか。だったら、ここを目指してみようかな」  私としては拒む理由は無い。素直に監督の言葉に従う。 「ああ。祥にとっては良い環境で野球ができると思うぞ。ちょっと向こうの監督と接触できるか試してみるよ」 「ありがとうございます。よろしくお願いします」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!