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嘘
私は幼なじみの彼が好きだ。
超爽やかイケメンでもなく、超気が利く頼れる男性、という感じでもなく。地味ではないけど、その辺に居そうな彼。でもなんだかんだ優しい所が大好き。とかいうよくある理由で。
私は中学2年生。彼は中学3年生。家は隣だけど市外の高校に進んだからこれからも話せるか、会えるかと言えば、それは分からない。その頃には彼にも彼女が出来て失恋するかもしれない。ずっと彼に告白したかった。毎年バレンタインのチョコレートを手作りして、本命だけど恥ずかしくて「義理だけどね」と毎年言って。毎年毎年繰り返してきた。小学校の卒業式の日も中学校の卒業式の日も告白しようとしたけれど、なかなかいえなかった。彼ももうすぐ入学式だから本当にあまり時間がない。カレンダーを見るともう4月1日だった。私はラインを開いて彼を呼び出す口実を考えた。
『ずっと伝えたいことがあったの』
これは乙女チックすぎるかもしれない。
『伝えたいことがある』
これだけだとキレてると感じるかもしれない。
『会いたい』
これは面倒くさくて会ってくれないかもしれない。
『話がある』
これは怒る前ぶりみたいで怖いかもしれない。
私は打っては消して、打っては消してを繰り返した。そんな事を30分も繰り返しているうちに恥ずかしくなってきて会いたくなくなってきた。私は本当に彼が好きなのかさえ不安になってくる。ちゃんと会うと表情が見えるから彼が断る時の顔もよく見えてしまう。そんな事を悶々と考えているともっと会いたくなくなってくる。
だから私はラインで告白することにした。
『ねぇねぇ』と送り既読がつくのを開いたまま待った。すると数分で既読がつき、『なぁに?』と返ってきた。そこで私は告白の前置きを打ち込んだ。『ずっと言いたかったことがあるの』いざ打ち込んで見るとこれでいいのか不安になってくる。私はどうにでもなれとそのまま送信。続けて『ずっと好きでした。付き合ってください。』と送った。
それらのメッセージにすぐ既読がついた。なのに5分待っても返信が来なかった。やっぱり、嫌、だったのだろうか。10分程すると通知音が鳴った。すぐに返信を確認した。『エイプリルフールだもんな』エイプリルフール。4月1日。あぁ、確かに。でも、この気持ちは嘘じゃなくて本当だった。10分かけて返ってきたメッセージが『エイプリルフールだもんな』。きっと、私の事はただの幼なじみとしか見ていなかったのだろうな。ゆっくりと『本当だよ!』と打ち込んだ。でもすぐに消して『ごめんね』『嘘だよ』と送信した。
彼は嘘コクしてきた私のことをどう見るだろうか。気まずいと思うのか、まだ幼なじみとして見てくれるのか。
10分も返信に時間をかけているのは返信に困ったからだろう。ならきっと彼は前者だ。
私の彼への気持ち。
「嘘だよ…」
スマホにぽたぽたと涙が落ちた。
今までの努力はこのためだったの、凝ってるでしょと言ってしまいたい。
もう何もかもなかったことにしてしまいたい。
「嘘…」
もしも、嘘だよって言えたら、どれだけ楽だっただろう。
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