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隣で一緒に
春休みが終われば、また僕の見ている世界が変わってしまう。
最初は気にしてなかったけど、中学校を卒業して、その変わってしまう何かに期待と同時に恐怖も襲いかかってくる。
その恐怖から目を背けるように、僕はまた丘の公園を歩き、展望台を目指す。
四季と共に景色が変わりゆく公園は、まるで学校生活のように少しずつ変わり、ピンクにも白にも見える満開の桜の季節がやってきた。
毎回、桜を見ると笑顔になり、そして考え込んでしまう。
また、笑顔でこの桜が見られるのかって。
僕はどこへ向かい、何がしたいんだろうって。
無限の可能性を見出す猶予期間を、春だけに見える桜が、僕たちの心を焦らせる。
太陽の光で、桜がキラキラ輝いて見える。
高校生、未来の可能性を探り、考える場所。
少し気負いすぎかもしれないけど、やりたいことが何も無い今、どうやって探していくんだろう。
そんな悩みを、展望台に着いた僕は、ずっと住んでいる町並みの景色を眺める。
「一緒に探せばいいよ」
突然の幼馴染の声。
振り向けば、顔が近くて思わず倒れてしまう。
「ごめんごめん、そんなに驚くとは思わなくて」
彼女の大人びた姿を見ると、早く大人になれと急かされてるような気持ちになる。
そのせいか、伸ばされた手を僕は拒んでしまった。
「じ、自分で立てるって」
「ふっ、ふふ」
「何で笑うんだよ!」
「だってさ、次はもう高校生だよ? あんなに、見るもの全てが新鮮でさ、何をやっても冒険だったあの頃から、もうこんなに成長して……」
彼女の僅かな表情の陰りを見逃さなかった。
新しく見える景色は、どんな所なのか。
それは、彼女にも分からないんだ。
でも、僕と違って、その不安を笑顔に変えて、一歩先に行こうとしている。
僕、一人だけじゃない……。
高校生になろうとしている皆がそうなんだ!
彼女の手をそっと自分から握ると、驚いた表情を見せる。
次第に、頬が少しずつ桜色に変わり、笑顔が満開となって咲いた。
「少しずつ、歩こうよ。新しい生活も、やりたいことも、そのための高校生活だろ?」
「そうだね。私も、人のこと言えないや。もちろん、隣は……いつも君が、いてくれるん、だよね?」
その質問に、僕も照れくさくなりながらも頷き、桜並木を一緒に手を繋いで歩いていく。
これは、同じ歩幅じゃないかもしれないけど、想いが重なっていく恋物語。
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