夜中の窓を叩くのは

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「じゃあ、その子どもの泣き声って……」 「それ以上言わないで。私も考えないようにしてるんだから」  二人の間に沈黙が降りる。  結局、その後は怪談で盛り上がる気にもなれず、解散となった。  波留と別れ、安ワインで火照った体をクールダウンさせながら帰路に就く。  既に四月だというのに、風は強く冷たい。こういう時、温もりを分かち合える恋人でもいればいいのだけれども……絶賛独り身中だった。 「波留に泊りに来て貰えばよかった」  マンションのエントランスを抜けてから、今更な呟きを漏らす。  波留のことだ、茶化したりせず泊りに来てくれるとは思う。けれども、私のちっぽけなプライドがそれを許さなかった。  二十六にもなって、怪談が怖くて友達に泣きつくなんて、と。
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