夜中の窓を叩くのは

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「たっだいま~」  抜けきらぬ酒の勢いも手伝って、無人の室内に呼びかける。  もちろん、返事はない。むしろ、あったら怖い。  そのまま、流れるようにシャワーを済ませ、髪を乾かしながらテレビをつける。出来るだけ騒がしく、くだらないバラエティ番組を探し、ギリギリ近所迷惑にならない音量で垂れ流す。  スマホの充電も忘れない。今夜は寝ている間もずっと、何か楽しい音楽を流しておくことにしよう。  冷蔵庫から安いビールを取り出し、「人間を堕落させるソファー」に沈み込みながら、ぼんやりとテレビを眺める。  画面の中では、顔と名前の一致しないお笑い芸人が、鉄道に関する愛を語っていた。鉄ちゃんというやつだろうか。  鉄道には何の興味のないので、BGMとしては丁度良い。  ――そのまま、数十分が過ぎた。  エアコンの利いた室内は程よく暖かく、興味のないテレビ番組の内容も相まって、優しい眠気が訪れていた。 (そろそろ寝ようか)  そう思い、ソファーから身を起こした時のことだった。
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