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翼久がデリバリーで頼んだ朝食を口にしながら、つぐみはようやく部屋の中を見渡した。
テレビを囲むよう取り付けられた収納にはたくさんの本が並んでおり、その横には机とパソコンが置かれている。黒一色で統一された家具はスッキリとした印象を与えた。
食事を終えたつぐみは、本棚に近寄って背表紙眺める。持っているものもあれば、知らないもの、これから読もうとしていた本を見つけて、思わず胸が躍った。
「この本、ちょうど読みたかったの。まさか翼久くんの部屋で見つけるとは思わなかった」
「あぁ、俺もこの間読んだんだ。評判良かったよね」
「そうなの! あの……これ借りてもいい?」
「貸してもいいけど、ここで読んでいってもいいんだよ。俺としてはつぐみさんがいてくれた方が嬉しいからね」
なんでこの子は、こんなに恥ずかしいセリフを簡単に口にしてしまうんだろうーーでもつぐみの心は翼久からの愛情ですっかり満たされていた。
最初は騙されてもいいと思ったのに、今は彼の気持ちが本物であることを心から願っている。
キッチンでの洗い物を終えた翼久は部屋に戻るなり、つぐみを背後から抱きしめた。
「あぁ、つぐみさんを抱きしめられるなんて、幸せ過ぎる」
「それ、昨日も言ってなかった?」
「それだけ特別なことなんだ」
自分のことを"特別"だと言ってもらえることが、こんなにも嬉しいなんて久しぶりに感じた。
もっと早くに彼に気持ちを伝えていたら、もっと早くに再会していたらーーそんなことをつい考えてしまう自分がいる。
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