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「ねぇ、翼久くんって検察官だし、法律は詳しいんだよね」
「まぁそうだね。何か知りたいことでもあるの?」
「ん……例えば私が高校生の翼久くんと付き合ったりしたら、どうなっていたのかなって……」
「もしバレたら捕まるね。特に体の関係があったら最悪だよ」
「うっ……なるほど」
「実を言うと、俺もそのことを調べたのがきっかけで、法律の道に進んだんだ。もしあの時、つぐみさんと付き合ってたらって。今だから言うけど、お互い踏みとどまって正解だったよ」
なんて説得力のある答えだろう。あの時に我慢できずに気持ちに正直になっていたら、今の私たちはなかったかもしれない。
「つぐみさんは、鳥の"ツグミ"について知ってる?」
「あぁ、いるんだよね。でもほとんど知らないかも」
「ツグミってさ、数歩歩いたらぴたっと止まるんだって。それがだるまさんが転んだに見えるって言われてるんだけど、俺には周りに気をつけながら距離をとってこようとするつぐみさんと重なって見えた。だから見ていない隙に距離を縮めようとしたけど、同じだけ進んでいっちゃうんだ」
「そんな……私からすれば、前途洋々な翼久くんにおいていかれた気分だったよ」
「それは初耳だな。じゃあお互いに追いかけっこをしていたわけだ」
二人が互いを振り返りながら同じ場所を進んでいる姿を想像したら、つい笑ってしまった。
「それにツグミは春夏はしっかりさえずるのに、夏至を過ぎた頃から鳴かなくなるんだ。だから"ツグミ"って言う名前らしいんだけど」
「……私が気持ちを隠していたから?」
「うん、さすが名前が同じだけあるよね」
複雑な気持ちだったが、否定することも出来なかった。
「さっ、じゃあせっかくだし買い物にでも行こうか」
「えっ、家から出ないんじゃなかったの?」
「そのつもりだったけど、ちゃんとつぐみさんの気持ちを知れたからね。それに休みはあと二日あるし、これから先のつぐみさんは俺とずっと一緒にいてくれるって約束したからね」
彼はもう少しドライな性格なのかと思っていたが、実際はそうではなかったようだ。
意外と独占欲が強めなのねーーそんな彼が可愛いく見えてしまう。
彼のことだから、今夜もしっかり愛し合うつもりに違いない。つぐみは自身の体力が保つのかが不安になった。
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