第1話 勢いで出たら死にかけた話2

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第1話 勢いで出たら死にかけた話2

 森の小屋の中。心底呆れた声に、わたしはこくんと頷いた。  わたし、ミリア・リリ・カルサイト。  にじゅっさい。一応姫だった。  綺麗な金髪・金の髪を持つ絶世の美女。わたしが笑えば誰もが微笑み返す──程の容姿があれば、もしかしたら追い出されなかったのかもしれないが、残念ながらそんなことのない、至って地味な、茶髪に琥珀色の瞳の追放姫である。……いや、『だった』。  そんなわたしに呆れまくってるのは、黒髪顔面彫刻のおにーさん。エリックというらしい。  地味目のわたしに反して、こちらは顔面美麗カラット。  緩いくせっけの童顔フェイス。年齢不詳。十代の男の子にも見えるけど、もう少し上? 態度は偉そう。しっかりしてるともいう。  堂々とした出で立ちが彫刻を思わせる男の人だ。  彼に拾われたのが三日ぐらい前の夕方。枯葉に埋まってたらしい。寝っぱなしだったらしい。全然覚えてない。  呆れまなこの質問に平々坦々(へいへいたんたん)、『ぽん、』と応えるわたしに、エリックおにーさんは訝しげだ。まるで、絡まりまくった糸を前にしたような顔で私に言う。 「……随分跳ね返りの姫君だな?」 「そうでもしなきゃ王族なんてできない。おとーさま性格悪い。絶対アレ『追放する!』って言いたいだけだよ、そう思う」 「……なんで娘を追放するんだよ」 「ブームなんじゃない? 噂で聞いたことある」 「………………。……まあ、何はともあれ食事をとれるぐらいに回復して何よりだ」  言って呆れた顔そのまま、カップのスープをひと口飲む彼。釣られてわたしも、こくんと飲み込み──顔を緩ませた。 「……おいし~……正直死ぬかと思ったよね~、助かったぁ~」 「……そんな緩さで山越えしようとしていたのか……? ……頭が痛いな」  あくまでも緩く言うわたしに、また呆れるエリックさん。  そんなこと言われても、セント・ジュエルは山の中の小国。どの道を行っても山越えは避けられない。  色々甘かったのは確かだが、『とりあえず』。わたしはスープカップを両手にほんわか気分で眉を下げると、ゆるゆる〜と彼に言う。 「ありがと~、助かったよ~、目の前が真っ暗でなんにも見えないとか、生まれて初めての経験だった~」 「……のんきに言うよな……、君、俺が通らなかったらどうするつもりだったんだ?」 「……どーするって……」  訝し気な顔に、ぴたり。ちょっと考え、ちらり。
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