第1話 勢いで出たら死にかけた話3

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第1話 勢いで出たら死にかけた話3

「……死んでたのでは?」 「他人(ひと)事のように言わないでくれ。縁起でもない」 「野生動物の餌になってたと思う」 「……あっさり言うな」 「だって事実」 「……あのなあ、亡骸を見つける身にもなってくれ。数日は肉が食えなくなる」 「……それは、きついね? ごめんね?」 「…………」  あ。やばい、やってしまったかもしれない。  彼の『複雑を閉じ込めた沈黙』に、わたしは即反省した。  そう、これは『よくない癖』だ。言われたことに対してぽんぽんと返してしまうところ。自分では良いところだと思っているのだが、たまに注意を受けることもある。  考えなしとかよく言われる。でも、『テンポがこうなのだから仕方ない』が持論なのだが────……    『難しそうな顔』に冷や汗が出る。やばい。    彼はわたしの性格をよく知るわけじゃないし、ここでは『圧倒的強者』。わたしは置いてもらってる身。この体力で追い出されたらヤバイ。確実に死ぬ……!  ──と、こっそり危機感を覚えるわたしの前で、しばらく考え込んでいたおにーさんは不意に顔を上げると、黒く青い瞳に疑念を乗せて言うのである。
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