第1話 勢いで出たら死にかけた話

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第1話 勢いで出たら死にかけた話

「……『確認』したいんだけど。君は本当に『姫君』なのか? にわかには信じられないんだけど」 「んまぁ、そーだよね~、でも、残念ながらセント・ジュエルのお姫様なんだなぁ。これが」  やや不敬気味の質問に、肩をすくめて答えた。  エリックさんの気持ちはわかる。  わたしでさえこんなのが姫君だと言われても信じらない。  国を出た時の衣装も普通のワンピースだし、それも土まみれだった。今だって、おにーさんの服を借りている状態だ。    どこからどう見ても王女には見えない。   「──っていっても、第26王女。継承権なんてあるはずもない、上位貴族に毛が生えたようなもんだよ~、末端のまったん。」 「……ふうん。まあ、君が継承権から遠い王族なのは納得だな。王座に近ければ近いほど、それ相応の教育を受けているはずだが、君にはそれを感じられない」 「興味なさげな口調で割と失礼なこといってるよね? まあいいんだけどね??」 「──本来、王族相手ならばこんな態度は『不敬』だ。しかし、君の場合は……」 「……はい、らしくないです。自覚あります」  そのとーりです。  わたしのツッコミをナチュラルスルーする彼の言葉をまんま受け止め、肩をすくめた。    「──だって、しょうがなくない? 人には人の性格があると思わない? そんな、生まれもった個性を潰してまで、王族やりたいと思わないもん」 「……王族って、希望でするものじゃないと思うけど」 「……けっこーずぱっというよね。おにーさん。お口が正直だよね」 「そうでもない。普段はわきまえてるさ」  ……ほんとかコイツ……  さっきから思ってたけど、このおにーさん、顔は美麗カラットだけど性格はなかなか(・・・・)だ。『顔面でモテるが辛辣さで嫌われる』部類の人とみた。  本人がモテたいかどうかは存じ上げないが、『ここにいるだけはある』のかもしれない。  そこまで胸の内で呟いて。わたしは彼を視界の中心でとらえると、軽~く、問いを投げてみた。
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