こぶとりじいさん

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 むかし、むかし、ある村に、おじいさんが住んでいました。  ある日のこと、おじいさんは鏡を見ると、おじいさんのほっぺたが少しだけ膨らんでいました。  このとき、おじいさんは大して気にしませんでした。  また、ある日のこと、おじいさんは鏡を見ると、おじいさんのほっぺたが、また膨らみました。  おじいさんは、少し気になりだしました。  また、ある日のこと、おじいさんは鏡を見ると、おじいさんのほっぺたが、またまた膨らみました。  おじいさんは、気にし出しました。  また、ある日のこと、おじいさんは鏡を見ると、おじいさんのほっぺたが、またまたまた膨らみました。  おじいさんは、これは大変、と観念しました。    「顔がずいぶん丸くなったなぁ~」と、小太りじいさんは嘆きました。  そして、ついにダイエットを決意しました。  しかし、ダイエットを決意したのも束の間、小太りじいさんは「お腹空いたなぁ~」と呟きました。  そこに悪魔が出てきました。  悪魔は言います。「YOU、食べちゃいなよ」  すると天使も出てきました。  天使は言います。「さっきダイエットしたばかりじゃない。ダメよ、悪魔の声に耳を傾けないで」  悪魔は言います。「おい、おい。別に太るくらいいいじゃないか」  天使は言います。「ダメよ。太ってるだけでなくて、血圧も血糖値もコレステロール値も高いのよ」  「おい、おい。この歳になって、食べたいものを我慢して生きて、何が楽しい?」と悪魔。  「ずっと我慢しろ、なんて言ってないわ。せめて、ダイエットが成功して痩せるまでの我慢よ」と天使。  「見た目を気にする歳でもないんだから、太っていて何がダメなんだ?」、悪魔。  「歳をとっても、見た目は大事よ。そんなんだから近所から、小太りじいさん、って陰口、言われんのよ」、天使。  「陰口なんて、その、小太りじいさん、っていう呼び名さえ変えれば、所詮、周りの評判なんてコロリと変わるぜ」と悪魔。  「呼び名を変えたぐらいで、周りからの評価や評判は変わらないわ。やっぱり努力と根性で自分自身を変えて行かなきゃ」と天使。  「じゃあ、俺様が良い呼び名をくれてやる。それで、お前のイメージが変わるか変わらないか勝負しようぜ」と悪魔は提案。  「いいわよ。受けて立つわ」と天使も承諾。  「これからは『小太りじいさん』と呼ぶんではなくて、『ぽっちゃりおじいさん』って言いな」と悪魔。  「『ぽっちゃりおじいさん』。ぬぐぐぐぅ・・・。確かに可愛く感じる」と天使。  「はい、もうダイエットなんて止め、止め。もっと楽に、楽しく、人生、生きようぜ。どうせ最後は死ぬんだし」と悪魔。  「そんな人生はダメよ~。ダメ、ダメ。人生は目的を持って、それに向かって頑張ることが大切なのよ」と天使。  「そんな生き方は古いぜ。これからの時代は、目立ってなんぼだぜ。うまいことやって注目を浴びた者が勝つのさ」と悪魔。  「生き方に古いも新しいも無いわ。努力と根性よ」と天使。  「好き勝手に生きようぜ」と悪魔。  「自分に勝つのよ」と天使。  悪魔と天使の会話の中、小太りじいさんは、あることを思い出しました。  「そう言えば、茶棚に、まだ大福が残っていたな~」と、小太りじいさんは呟きました。  「食っちまおうぜ」と悪魔は(ささや)きます。  「潰して食べればカロリーゼロね」と天使は呟きます。  悪魔と天使は肩を組み、歌うように言いました。  「ダイエットは明日から~」  こうして数年後には、小太りじいさんは、激太りじいさんになりましたとさ。  怖いラストでしたね~。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。
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