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ノックをしてドアを開けたとたん、紀田さんが「加藤さん」と言いながら沈痛な面持ちで歩み寄ってきた。
訳もわからず、とりあえず「おはようございます」と挨拶した。
すると彼女は わたしの目の前で、額が膝につきそうなほど深く頭を下げた。
「加藤さん、すみません」
「え、あの、頭を上げてください。いったい、どうされたんですか」
「本当にごめんなさい。実はモデルを……降りていただかなければならなくなってしまって」
紀田さんは絞りだすような声でそう言った。
モデルを降りる……って?
その言葉にいち早く反応したのは、岩崎さんのほうで、すぐに抗議の声を上げた。
「えーーーっ、なんでですか? 優紀さん、めちゃくちゃ頑張ってるじゃないですか。わたし、いつも感心してるんです。あれほどストイックな要求をきちんとこなしてくれる人はそうそういないです!」
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