第5章 〈レッスン2〉 アフタヌーン・キス

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 あれ、ちょっと薬っぽい味がするから苦手なんだよね、実は。  わたしはおそるおそる口をつけた。  あれ、これは飲みやすい。   「美味しいです。とっても甘酸っぱくて」  わたしがきれいに飲み干すと、玲伊さんは笑みを浮かべた。 「そう。口にあって良かったよ」  玲伊さんは、わたしの手から空になったグラスを取り、テーブルのトレイの上に置いた。  そしてわたしの隣に座り、長い脚を組んだ。 「さて、初日の感想は?」 「うーん、思っていたよりもずっと疲れました」 「そう? そんなに大変だったかな」 「はい。わたし、写真を撮られるのが大の苦手で。それにずっとおばあちゃんと二人の生活を続けていたから、人が多いところにいるだけでも疲れてしまって」 「そうか。まあ、はじめてのことは誰だって疲れるものだし。でもすぐ慣れるよ。ヘッドスパもしてあげるから、疲れが取れるといいね」 「ヘッドスパ? わ、それもはじめてです」  玲伊さんは準備するからちょっと待ってて、と言って、オーガンジーで仕切られているブースに入っていった。
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